税金控除はセルフメディケーション税制か医療費控除の2択
【セルフメディケーション税制】
医療費が年間10万円を超えると控除が受けられることは、ご存じの人も多いだろう。しかし、10万円の壁はけっこう高い。“うちには関係ないわ”と興味を示さないあなたも、今年から始まった新制度『セルフメディケーション税制』によって控除が受けられるかもしれない!
「特定成分を含むOTC医薬品が市販化されたスイッチOTCと呼ばれる市販薬を年間1万2000円以上購入すると、超えた部分の金額(上限8万8000円)について所得の控除が受けられます」
控除の対象となる市販薬は実に1500品目以上。風邪薬パブロン、抗アレルギー剤アレグラ、解熱鎮痛剤ロキソニン、筋肉痛を抑えるサロメチール。家族がお世話になるおなじみの薬がずらり。
「商品パッケージについている『セルフメディケーション税控除対象』のマークが目印。ただ、マークがついていない対象商品もあります。厚生労働省のホームページに対象品目の一覧が掲載されているので確認できます」
家族の分も含めて今年1年間に購入した対象薬の合計が1万2000円を超えるようなら来年の確定申告(受け付けは2~3月)で申請しよう。
「そのためにもレシートや領収書の保管はマスト。対象となる医薬品はレシートの横に★や●印がついています」
いくら対象薬をたくさん購入しても確定申告をしなければ控除は受けられない。
その手間をかけると、いったいどのくらいトクするのか? 下の図は年間5万円購入した場合の控除額を示した例。所得税と住民税を合わせて、なんと1万円以上の減税効果が。これは申告しなきゃソンするだけ!
「ただし、ちゃんと普段から自分で健康管理をしている人のみが対象となります。具体的には、会社や自治体での健康診断、人間ドック、がん検診、予防接種など、いずれかを受けていることが条件。そのため、診断したことを証明するもの(領収書か診断結果のコピー)を提出する必要があります」
なお、医療費控除とセルフメディケーション控除、両方を受けることはできない。
「医療費が控除額10万円に達しない場合は、セルフメディケーション控除の申請をしましょう。1年間の医療費が高額で、通常の医療費控除をしたほうがトクな場合は、セルフメディケーションの対象となるOTC薬の分も医療費に加算して申請しましょう」
【医療費控除】
医療費控除というと、“出産や大きな病気をして治療代がかさんだときに申請するもの”というイメージが強い。でも実は、病院に支払う医療費だけでなく、いろんな費用が控除の対象になる。
「例えば、病院までの交通費。電車やバス代など。さらにお医者さんの送迎費。病気療養のために看護師さんや保健師さん、家政婦さんを依頼した場合は、その費用も対象になります。また、寝たきりになった場合のおむつ代も医師の証明書があれば認められます」
一方、手術や治療でも美容のための費用は対象外。
「“もっときれいな歯並びにしたい”という大人の歯列矯正は認められません。ですが、子どもの矯正は、歯やあごの健康的な成長を促す医療行為として控除の対象になります」
義歯、差し歯は保険適用外の金やセラミック素材のものも控除の対象になる。同様にインプラントもOK。
「基本的に治療に対する費用はOKで、予防のためのものはダメ。なので、治療のためのあんま、整体、指圧、鍼灸の施術費も対象になります。でも健康増進のための栄養ドリンク、ビタミン剤はダメ」
市販の薬も、風邪など病気を治すためなら、OTC薬に限らず控除できる。ほかにも、こんな治療が対象に。
「近視や乱視を治療して視力を回復させるレーザー手術の費用は控除の対象になります。でも、メガネやコンタクトレンズは治療ではないので対象外。治療の一環として医師の指示で装着するメガネに関しては控除の対象となります。
また、花粉症などアレルギーの治療で行われる舌下免疫療法も現在は保険がきき、医療控除もできます」
このように控除の対象となるものは、時代とともに拡大する傾向にある。“これは対象に?”と思うものがあったら、国税庁のホームページで確認するか、所轄の税務署に問い合わせを。なお、高額療養費制度を利用した場合、戻ってきた金額を差し引いた分が医療費控除の対象に。
家族の医療費や薬代、通院などいろいろかき集めれば10万円以上になるかも。
「10万円以下でも申請できることも。年間所得200万円未満の場合は所得の5%で計算。所得100万円なら医療費が5万円を超えた分の所得が減額され減税に。過去の医療費も、5年前のものまでなら申告することができます」
<教えてくれた人>
ファイナンシャルプランナー風呂内亜矢さん
SE、不動産会社の営業を経て2013年にFPとして独立。テレビ、新聞連載などでお金に関する情報を発信。著書に『デキる女は「抜け目」ない』(あさ出版刊)など多数