レイプ被害に遭うことで殺人事件を起こしてしまうほど、レイプ被害の精神的ダメージが大きいことを「女の痛み」だとするのなら、これこそが“オトコの思い込み”です。レイプは男性が女性を犯すことではありません。数こそ少ないものの、男性も被害にあっています。また、異性間で発生するとは限らず、同性間でも成立します。レイプは「女の痛み」ではなく「被害者の痛み」なのです。レイプを「女の痛み」「女の哀しみ」と断じるのは、被害者になる確率が少ない異性愛者、つまりオトコではないでしょうか。

 いずれにしても、レイプはこのテイストのドラマで扱うのに適した題材とは、思えません。

菜美の決めゼリフ「あなたの味方」にも違和感

 また、菜美はことあるごとに「あなたの味方」と女性たちに語りかけます。正義の味方らしいセリフですが、私はここにも大きな違和感を覚えます。女性の連帯がウソであると言う意味ではありません。女性同士が味方となるには、動機やプロセスが必要ですが、このドラマではそのあたりがまるで描かれていないので、説得力がないのです。

 また、「女だから、女の味方」は、実はオトコ目線ではないかと私は思っています。男性が同僚や友人を裏切っても“個人の選択”と解釈されるのに、女性が同じことをすると「女の敵は女」とか「女はコワイ」という言い方をされがちです。そこにあるのは「女なら、女の味方をすべきなのに」という前提条件でしょう。「女だから、女の味方」は「女の敵は女」の温床なのです。

 とはいえ、旬の俳優を多く起用したこのドラマが、注目を集めるのは理解できます。

 町で唯一のまともな男、菜美の夫の伊佐山勇輝(西島秀俊)は、本当に“いい人”なのか。オトコ目線でどう調理されるのか、期待しています。

(文/仁科友里)

<プロフィール>

仁科友里(にしな・ゆり)

1974年生まれ。会社員を経てフリーライターに。『サイゾーウーマン』『週刊SPA!』『GINGER』『steady.』などにタレント論、女子アナ批評を寄稿。また、自身のブログ、ツイッターで婚活に悩む男女の相談に答えている。2015年に『間違いだらけの婚活にサヨナラ!』(主婦と生活社)を発表し、異例の女性向け婚活本として話題に。近刊は、男性向け恋愛本『確実にモテる世界一シンプルなホメる技術』(アスペクト)