いったい、そういう行為にどういう意味があるのか。

オスは精子を生産すれば、何度でも複数のメスと交わることができます。でもメスは生産できる卵に限りがあるので、慎重にオスを選ぶ。オスとしてはなんとしても選んでもらわなければならない。だからオドリバエはプレゼントをする。多くの動物でオスの外見が派手になったのも同じ理由です。オスはいつでも他のオスと比べられ、進化していくものだけが残ってきたんです」

 オスのクジャクは飾り羽が長く、オスのシカの角が大きいのも、メスが派手なオスを選んでいったからである。このように配偶者がふるいにかけられることを「性淘汰」、または「性選択」という。これは人間にも働いている。女性が男性に対して経済力を求めることに生物学的意味を見いだせるし、男性が女性に若さや腰のくびれなど、生殖に関わるさまざまなことを求めるのにも、生物としての意味があると丸山さんは言う。

「ただ、昆虫が不倫をするかどうかについては……わかりません。そもそも恋愛感情も社会通念もありませんから(笑)。ただ、カブトムシやクワガタムシで見られることですが、ときどき、オスでありながらメスのように小柄なのがいて、つがいに紛れ込んでメスと交尾しようとすることがあります。オスの目を盗んで、いい思いをしようとするのがいるんです

 それが成就すれば、人間社会では立派な「不倫」である。

子どもがたくさんいる女性のほうが浮気しやすい!?

 昆虫にも通じる話だが、動物のオスはダメ元で数を撃ちたい、でもメスは妊娠・出産・子育てに日数がかかるため軽率に相手を選ぶわけにはいかない。だからメスはいい遺伝子をもっているオスを見きわめることが重要なのである。そう言うのは、動物行動学を研究する竹内久美子さんだ。

「人間も同じように思っているのではないかと考えたイギリスのR・ロビン・ベイカーとマーク・A・ベリスは非常に興味深い調査をおこなったんです。それは女性の年代別による浮気の確率について調べたものです。それによれば、10代後半、20代前半、20代後半と少しずつ浮気の確率が減っていくのですが、30代になると急に確率が上がることがわかりました。20代後半で4パーセントだったものが、30代で8パーセント、さらに40代では10パーセントとなります」

 同じアンケートでは、すでに何人子どもがいるかについても尋ねている。子どもの数と浮気の確率を問うているのだが、それによると子どもひとりだと3パーセント、子どもふたりだと10パーセント、そして4人以上だと31パーセントの高確率。つまり、子どものいない女性より子どもがたくさんいる人のほうが浮気しやすくなるというわけだ。