茨城県つくば市にある老犬・老猫ホーム『ひまわり』。
老犬ホームに預けても家族
ここには高齢犬や認知症、身体機能の低下から介護が必要になった約50匹が暮らす。飼い主の住まいは同市内から遠くは四国。頻度の高い人で週1回、愛犬に会いに来る。
同ホームで犬たちの介護にあたる松下晴子マネージャーは、「面会のときは犬も飼い主さんもうれしそうですよ。おやつをたくさん持ってくる人もいます。認知症のワンちゃんでも飼い主のにおいは覚えており、“あっ”という表情を見せることもあるんです」
幸せそうな光景の面会時間の裏側で、飼い主たちはそれぞれ葛藤を抱えている。
老犬ホームに愛犬を預けたことで、“無責任”“捨てた”などと後ろ指をさされることもあり、飼い主はその負い目と向き合ってきた。
「“飼い始めたとき犬も自分も年をとることを考えていなかった”と話す高齢の飼い主は少なくありません。みなさん“最後まで飼う”という気持ちはあっても、そうできない現実があるんです」
犬の介護がうまくいかなくなって精神的な疲れやストレスから体調を崩したり、介護離職をした人もいる。
「みなさんとても悩まれ大泣きしながら預けていきます」
こうした背景には医療の向上や室内飼いで、犬の平均寿命が延びたことがある。人と犬の老々介護は現在進行形なのだ。
一方、犬を預けた飼い主からは“ありがとう”と声をかけられることがあるという。
ただし、犬の介護や老犬ホームは、まだまだネガティブなイメージがつきまとう。
「預けることは介護から解放されること、逃げ道があるということなんです」(松下さん)
松下さんは、高齢で歩行困難になったダックスフントを抱きしめながら言う。
「犬の介護や高齢化は人間の社会の抱える問題と何ら変わりません。プロに頼んだり、距離を保てば無理なく犬ともいい関係を保っていけます」
“ことば”はなくても確かに愛があふれていた。