あと22年、今から備えを
介護についても同様だ。介護や福祉の支援を受けるためには自分から申請する必要がある。しかし、高齢で介護が必要な人が自分から役所を訪れ、相談できるのだろうか。
「家族や頼る人がいれば相談もできますし、お金がある人は施設に入ることができます。そうでない場合、介護が必要な人でも放置される可能性が高い」(山上教授)
家族社会学に詳しい長野県短期大学の築山秀夫教授は「単身高齢世帯問題のカギは『結婚』」と話す。
「日本は法的にも家族、世帯という単位でのつながりが強い。結婚率98%なんて時代もありましたが今は結婚=恋愛という風潮のため、生活困窮を理由に恋愛も諦める人が出ています。結婚したくてもできないことが問題です」
未婚率の増加は高齢者世帯に限らず、その下の世代でも同様の課題とされ、'40年以降も増加する可能性は高い。
「日本は家族になるというハードルがとても高い。特に“結婚してから子どもを”という考え方が根強いため、事実婚や同性婚の容認、養子縁組は外国に比べて遅れています。子育てや母親への支援についても税金の分配方法や使い方、社会保障制度や福祉の仕組み、世帯についても見直し、変えていかなければ、少子化に拍車がかかり生産人口は減っていきます」(築山教授)
2040年まであと22年。介護保険料や医療費といった社会保障費と生活保護費が増えれば、大幅な増税は避けて通れない。築山教授は「22年後に45%」という数字にばかり注目されていることに、
「今の時点で単身世帯の3割が高齢者、単身世帯数は家族構成の中でもトップです。将来いきなりこの問題が噴出するわけではありません。備えることができるはずです」
おひとりさま時代は到来している。もしかしたら大転換期は“いま”かもしれない。