過去は諦めること
失敗をしてしまったら、「事実と感情を切り分けること」を思い出してください。 失敗の原因だけを取り出し、余計な感情を取り払って認識できたなら、淡々とまたあるべきところに戻っていくことです。過ぎたことはもう諦めてください。ネガティブな諦めではありません。
「負の記憶を持ち続けることを諦める」、すなわち手放すのです。そして次に向かうのがマインドフルな思考です。過去を手放すことは、未来を捨てることにはならないのです。
「過去に引きずられてものを見る」というのは、人間の本質です。そことどう折り合いを付けるか、というのがマインドフルネスであり、禅なのです。失敗するたびに一回一回落ち込んでいては、次の仕事に集中できません。日々のトレーニングによって心に浮かんでくる雑念を払い、「今」の呼吸に意識を切り替える練習をしておけば、失敗を引きずらず、新しい仕事にしっかりと向き合えるようになります。
おすすめトレーニング:「と考えた」技法
A氏:そうはいっても、実際にミスして落ち込んでいるときには、なかなか事実と感 情の切り分けができません。どうしても感情に引きずられてしまいます。
先生:そうですね。事実だけをメモしてみるといいかもしれません。「こんなひどい怒られ方をした」「落ち込んだ」ではなく、「ここをミスした」という事実だけ書く。それでいったん雑念を吐き出すことができ、また仕事に戻っていきやすくなります。
A氏: なるほど。ミスの内容を書き留めたら、対処法も浮かんできやすくなりそうですね。
先生:ええ。それからもう一つ、対処法をお教えしましょう。「と考えた技法」というものです。
A氏:「と考えた技法」? ユニークな名前だ。
先生:自分が頭で考えていることに、「と考えた」と付け加えていく。自分が今どうして苦しいかを言葉にするんです。たとえば「仕事でミスをしてとても落ち込んでいる」と考えているとき。「私は仕事でミスをして、もう自分の価値がないんじゃないかと落ち込んでいる、と考えた」と、脳内で唱える。これだけで、 一気に自分を分析している状態になります。
A氏:脳が混乱している状態から、客観的な状態に戻れると。「と考えた」と付け加えるくらいなら、動揺しているときでも実践できそうです。
先生:これは「メタ認知療法」と呼ばれるものの一つです。強いストレスを受けて本当に辛いとき、心を落ち着かせたいときにも有効ですよ。
川野氏がマインドフルネスを解説する本書。序章では、「そもそもマインドフルネスとは一体なんなのか?」「どんな効能があるのか?」といった素朴な疑問を一から解消していきます。
第1章では、「呼吸瞑想」「歩行瞑想」など、マインドフルネスを実践するための 基本的な方法を解説。
第2章では、マインドフルネスを実生活において活かすための具体的な方法をお話しします。「満員電車が辛い」「仕事中に集中が途切れる「休日も仕事のことが頭を離れない」など、現代ビジネスパーソンのストレス源を14 点 取り上げ、「つり革瞑想」「キーアクション」などの解決策を図解入りで示しています。
第3章では、現代においてマインドフルネスが求められる背景と、科学的エビデンスを検証。
第4章では、マインドフルネスを習慣にした人がどのような変化を得られ、周囲にどんな影響をもたらしていくのかをお伝えしていきます。