「何度診ても診断は変わらない」
睡眠導入剤以外は処方が中止され、下関市の基幹病院である関門医療センターの神経内科を受診するよう指示された。'14年3月のことだった。4月1日に診察を受けた。
「先生はハケで、私の身体をくすぐったりしただけで、診察はすぐに終わりました。“首が勝手に動くんです、もっと検査をしてよく診てください”と必死に伝えたのですが、“心療内科で治してもらってください”と言うばかりでした」
その医師から心療内科に届いた報告書には《随意運動(自分で動かしている)と思われます》《心因的なもの》と記され、心療内科での説明はいい加減なものだった。
「ほら異常ないでしょ。異常ないって、と何度も報告書を見せて言うんです。待合室でも首が回って他の患者さんが離れていくんです。先生は私のところに来て気をつけのポーズをし“ちゃんとして”と私に言うんです」(吉田さん)
身体が勝手に動くのに心因性との診断。どうにかしなければとさまざまな医療機関を受診するが「原因不明」「心療内科で薬の調整をしてもらってください」との回答ばかり。
「起きていると首がずっと回っているから、寝ているしかないんです。そのうち首からパキパキと音がして、すっごく痛いんです。まっすぐ歩けんで、後ろに引っ張られてドブに落ちよるんです。家の中でも何度も転倒して、歩道から車道に出てしまいそうになったことも。友達や娘に支えてもらわんと、ひとりで出歩くこともできませんでした」
という吉田さん。'14年7月に、下関市内の脳外科クリニックを受診した。
「不随意運動があると認めてくれ、関門医療センターへ診療依頼の連絡をしてくれたのですが、神経内科からは“何度診ても診断は変わらない”と1度も診ていない医師から返答があったんです」
すがる思いで受診した隣県、福岡市内の病院の脳神経外科で、初めて『遅発性ジスキネジア・ジストニア』と診断が下された。
順天堂大学附属浦安病院のリハビリテーション科科長で同大学医学部神経学講座教授を併任する林明人医師は、
「平たく言えば運動があるものがジスキネジアで動きのない異常な筋緊張がある場合はジストニアになる。病態が非常に似ているため混同されて使われることもある。
どちらの症状も局所にとどまるものから全身に及ぶもの、軽度の症状から歩行困難になる場合と症状の程度は幅広い。これらの専門領域は神経内科であり、症状が出た場合には早期に受診することで多くは進行をとどめることができる」
と説明する。