一方、北朝鮮側は、代表団に金正恩氏の妹・金与正氏を加えて融和ムードを加速させようとしている。ただし、韓国が嫌がっていた8日の平壌での軍事パレードは強行した。口実として建軍記念日を4月25日から五輪開会式前日の2月8日に変更し、「慶事」と主張しているからひどい。
パレードには、昨年11月29日に発射実験した新型の大陸間弾道ミサイル(ICBM)『火星15』も登場。米国全土を射程に入れる能力があるとされ、トランプ氏がカッカする顔が目に浮かぶ。
前出の辺編集長は、
「米国、北朝鮮はどっちも引かないんです。五輪開催中は動かないでしょうが、平昌五輪を挟んで“場外戦”は続くはず。有事になれば巻き込まれるのは北朝鮮に近い韓国や日本です。だから韓国の文在寅大統領は、五輪期間中に米国と北朝鮮をなんとか握手させようと思っている。
しかし、トランプ氏にその気はない。先制攻撃で金正恩氏の戦意を喪失させて核・ミサイル開発を放棄させる“鼻血作戦(ブラッディ・ノーズ)”を着々と進めています」
と話す。
いつ、軍事衝突する可能性があるのか。
'18年9月9日までは何が起きてもおかしくない
平昌オリンピックは25日に閉会し、来月9〜18日まで同地でパラリンピックが開催される。4月には米韓合同軍事演習が予定されている。
「すべてはトランプ氏が手を出すかどうか。金正恩氏はパレードで誇示した『火星15』について、新年の辞で“大量生産して実戦配備しろ”と命じました。潜水艦発射弾道ミサイル(SLBM)『北極星3』の発射準備も進めています。
本土を射程にとらえられたトランプ氏がこれを先制攻撃する理由にしかねない。五輪後、北朝鮮が建国70周年を迎える9月9日までは何が起きてもおかしくない緊張状態が続きます」と辺編集長。
北朝鮮はしばしば、記念日に合わせて軍事的パフォーマンスを行う傾向がある。直近でみると、2月16日は父・金正日総書記の誕生日で、4月15日は祖父・金日成主席の誕生日。正恩氏は墓前に何を報告するのか。7度目の核実験やICBM発射実験の成功を報告するような展開にならないことを祈るしかない。
トランプ氏は好戦的な色合いを濃くしている。2日に発表した米国内の核体制見直し(NPR)では、爆発力を抑えた小型核兵器ならば使用できるなどと反平和的見解を示して世界を震撼させた。
軍事評論家の熊谷直氏は、
「小型核兵器を使うぞという脅しは昔からある」と話す。
「さすがのトランプ氏も核を使うつもりはないだろう。周囲は軍人で固められており、彼らも戦争をしたいとは思っていないはず。戦争になれば軍人は当事者だから。北朝鮮は体制崩壊を恐れていて、その根幹を揺さぶられそうになったら怖い。北朝鮮のICBMに言うほどの能力があるか疑問視しているが、本土まで届かなくてもハワイやグアムは狙えるはず」(熊谷氏)
核戦争を始めるほど愚かではないと信じたいが、常識からは行動の読めない両首脳だけに不安はぬぐえない。