元新聞記者だけに、徹底的に調べ上げて本を書き上げたのだ。

「実は、この本の依頼がきたとき、編集さんに保活中のママたちを応援する本を書いてほしいと頼まれました。しかし、書いていくうちに、ママたちだけががんばっても解決されない、社会全体で考えるべき問題だと本の方向性を変えてしまいました

 保活の基礎知識や、保活に失敗しない方法などをわかりやすく解説し、保活ママにはとても参考になる内容だが、真の目的は社会全体で待機児童問題を考えてほしいという。

子育て女性が夢を叶えられる国に

「大学までは男女の違いを感じたことはありませんでした。新聞記者時代も出産を考えるまでは、男性と同等に働いてきました。しかし、子どもを産んだ後、女性だけがキャリアをあきらめなければならない現実に直面し、どうにかならないものか考え、その結果が議員だったのかもしれません

 清家さんは女性も男性と同様に、夢をあきらめないでいい環境を作りたいと願って活動を続けている。

少子化問題を解決するはずの出産が、どうして保活という“罰ゲーム”のようになるのか、不思議でしかたありません」

『保育園浪人』清家あい=著(税込1404円/秀和システム)*画像をクリックするとamazonの購入ページにジャンプします(別ウィンドウ)
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 本書の中には、保活中にうつになってしまった女性の話も書かれている。働きたくても働けない、産休明けに復帰できない。「女性活躍推進」を打ち出す国策とは相反する現実が立ちはだかる。

「“たくさん子どもを産んで、たくさん働いて税金を納めてね。子育て支援にはお金が回せないから保育園には入れないけど”という政府の声がどこからか聞こえてくるようです」

 保活に苦しむママたちには、政府の無理解さと無責任さを共感できるが、清家さんが本当に読んでもらいたいのは保活に関わるママだけでなく、

「オジサンたちですね(笑)。待機児童問題に理解がない、そもそも保活を知らない、そういう人たちに社会問題として認識してもらいたいと思います」

 子育てを終えた人、子育てをしなかった人、これから子育てをする人、幅広い層に読んでもらい、待機児童問題の真実を知ってほしいと清家さんは話す。

「人口の7%を高齢者が占める社会を高齢化社会といいますが、日本はすでに27.3%。世界一の超高齢化社会になっています。今後、少子化が進んでいくと日本が沈んでいくのは止められません」

 誰もが身近な問題として考えるために、まずは現状を知ることが大切なのかもしれない。

■ライターは見た! 著者の素顔
 女性議員というと「このハゲー!」のようなキツいイメージがありましたが、清家さんは優しくやわらかいお人柄。逆に、待機児童問題で苦しんだ経験があるライターのほうが鼻息が荒かったかも。清家さんは、優しいながら問題解消に向けたビジョンを的確に説明。待機児童問題を経験した人は怒りが前面にきてしまいますが、多くの人に理解してもらうためには、清家さんのような、頭が良くて物腰のやわらかいリーダーが必要なのかも。

<プロフィール>
せいけ・あい◎港区議会議員。1974年12月、港区生まれ。産経新聞記者として7年、社会部で事件、行政取材を担当。現場のママの声を集め、行政に提言する「港区ママの会」を主宰。地方政治の活動実績に贈られる「第9回マニフェスト大賞」最優秀賞を受賞。

(取材・文/山崎ますみ)