「夫は協力的ではあったけど、仕事が忙しいですし、“できること、間に合うことはすべてやる!”という私とは温度差がありました。そんな夫に対して怒りが爆発したことも。でも吐き出したことで私はラクになりました。
何より夫が“私が追い詰められていること”に気づき、妊活中の心の揺れに寄り添ってくれるようになったのが大きかったですね。妊娠の壁になるのも妊活クライシスを招くのもストレスの蓄積が原因。それをいかに軽減するかがカギだと思います。旦那さんの役目は大きいですね(笑)」
これまでも体験談をブログなどで発信してきた彼女は、自らの体験をまとめた著書を上梓した。
「後悔、失敗も含めた私のいろんな思いや経験を参考にしてもらえたら幸いです。そしてストレスの軽減に役立ててほしい」
こうした活動や人々との交流を通して世の中の問題点にも目を向けるようになった。
「妊活は早くスタートして」
「治療によっては、手術前後1か月ほど毎日通院してホルモン注射を打つ必要があるんです。働きながら妊活する人に“治療時間をどう確保するか”という相談をよく受けます。仕事先の近くにホルモン注射を打ってくれる病院があればいいけど、不妊治療を謳っていても代理で注射を打ってくれる病院は少ないのが現状。
私も地方の仕事のときは困りました。新生児の20人に1人が高度生殖補助医療で生まれている今、病院側の対応環境を早急に整えてほしいと願います」
もちろん高齢妊活を奨励しているわけではない。
「高齢になれば流産のリスクも高まる。私は“妊活はなるべく早くスタートしてほしい”と、みなさんに伝えています」
一方で、自身は妊活で得たものがたくさんあると話す。
「体外受精などの不妊治療って人工的で冷たい印象がありますが、お医者さんや看護師さんをはじめいろんな人の力を借りて命を育むというのは心の通った温かいもの。不妊治療中はいやおうなしに自分の内面と対峙しなければならないし、夫婦関係を見つめ直す場面が何度もありました。
そのなかで夫婦の絆も深まっていった。私たちは授かる前に“親になるとはどういうことか”を学び、ともに生きる力をもらった気がします」
治療前はそれほど子どもを望んでいなかった夫も、今では息子たちにデレデレだとか。
「こんなに子どもが好きなら、もっと早く取り組めばよかったのにと思うけど(笑)。今だから夫もこうなったのかも。やはりタイミングですね。私たち夫婦に授かるべきタイミングで子どもたちが来てくれた。今はそう思えます」
(取材・文/村瀬素子)
加藤貴子(かとう・たかこ)◎女優 1970年、静岡県生まれ。『温泉へ行こう』シリーズの主演をはじめ『科捜研の女』シリーズ、『花より男子』『とんび』など数多くのテレビドラマや舞台で活躍。3月22日に、妊活中に起こったさまざまな出来事をつづった著書『大人の授かりBOOK 〜焦りをひと呼吸に変える がんばりすぎないコツ〜』(ワニブックス刊)を発売。