もうひとつ気になるのが、ヒロインの幼年時代を演じる子役の存在。朝ドラからは何人もの名子役が輩出されているが、'74年4月から1年に渡って放送された第14回『鳩子の海』で主役に抜擢された藤田三保子は雑誌のインタビューでこう語っている。
《子役の斉藤こず恵ちゃんから私に代わった途端、ものすごいバッシングが起きたんです。子役が出演している時期が1か月半あって、ある土曜日に子役の出演が終わって、翌週の月曜日に大人の役者に代わるんですが、それが私だったもんですから、視聴者から非難ごうごうだったんですよ(笑)》
それは、子役の斉藤こず恵があまりにも健気で愛らしかったため、視聴者は似ても似つかない藤田に感情移入できなかったからのようだ。そのため、
《これ以降、子役の出演は第1週だけになりました》
という。子役の人気が出すぎて、本来の主役の人気が出なくなっては困るからということらしい。
その後、長らく朝ドラは半年クールだったが、83年4月から1年間放送された第31回『おしん』で再び同じような現象が起きている。このときの子役は、名子役の誉れも高い、小林綾子。やはり1か月半の出演だったが、
「『おしん』といったら、小林綾子で、大人時代の田中裕子や晩年の乙羽信子の影は薄いですね」(前出・テレビ誌ライター)
さて、今回は“朝ドラ革命”と言うだけあって、なんと主人公が登場するのは、幼年時代ではなく“胎児”から。そして幼年時代は“掟破り”の第2週まで続いた。
「『鈴愛』役の矢崎由紗を始め、個性的で魅力のある子役たちが出演しています。彼らが演じた子ども時代の話は、'60年代から'70年代にかけて大ヒットしたホームドラマ『チャコちゃんシリーズ』『ケンちゃんシリーズ』を彷彿させ、面白いです。
このまましばらく子ども時代を見ていたいと思う人も多かったようで、また子役に持って行かれるところでした。今回は本来の主役・永野芽郁をおびやかすことはなかったようですね(笑)」(スポーツ紙記者)
一旦落ちた視聴率も、子役たちの活躍もあって上昇し始めた。これからどんな“型破り”なストーリーが展開されるのか、興味はいやましにふくらんでいく。
<芸能ジャーナリスト・佐々木博之>
◎元フライデー記者。現在も週刊誌等で取材活動を続けており、テレビ・ラジオ番組などでコメンテーターとしても活躍中。