いまや各地で目にするゴールデンウイークの北海道展も、内田さんが始めた。
「最初、社内は大反対。“その時期はみんなディズニーランドなどへ旅行に行く”と思い込んでいた。ところが、ふたを開けてみたら大盛況でした」
集客のため富良野のビニールハウスで4000鉢のラベンダーを作ってもらい、会場にラベンダー畑を再現。その鉢をお客さんにプレゼントしたのだ。
「そしたら翌年、物産展にいらしたお客様が富良野に行かれたみたいで。“私のラベンダーはちゃんと咲いているわよ”と言いに来てくれたんですね。そのときに、物産展は自分が考えている以上に波及効果があるんだなとわかったんです」
現在、内田さんは地方の生産者と一緒になってモノづくりをしている。
「同じものを大量に売る時代から、百貨店らしく“いいもの”を数少なく売っていく時代に移行してきているなと思うんです。1本1万円のぶどうジュースとか、『飲む羊羹』なども手がけましたが、反響は大きかった。
今は『花昆布』といって昆布をコサージュ状にして、お湯を入れると花が咲いたように見えるものを作っています。そういう付加価値のあるものが、百貨店らしさにつながる」
現在、物産展を開く百貨店は少なくなっている。しかし、内田さんは、駅のスペースを活用して地域の特産品を販売するプランに取り組んでいる。
「その駅の中に入っているレストランも連動して、同じ地域の食材で料理を作る。それをこの夏、あちこちでやります。百貨店が足踏みしている間に、どんどんほかのところが試みを実現させていますよ」
《PROFILE》内田勝規さん 1957年生まれ。大学卒業後、東武百貨店に入社。「北海道物産展といえば東武」と言われるまでに育て上げ、’10年に東武百貨店を退社。地域のためにともに考え、地域を元気にするために全国、海外を飛び回っている