現場の悲鳴をデータが裏づける。文部科学省が昨年4月に発表した『教員勤務実態調査』によれば、公立校で働く教員のうち小学校で3割、中学校で6割が「過労死ライン」(残業月80時間)に達する計算になる週60時間以上の勤務をこなしていた。
実際、'16年度までの10年間で63人の公立校教員が過労死と認定されたことが毎日新聞の報道で明らかになっている。
どれだけ働いても残業代は出ない
残業に追われるだけでなく休憩を取ることも難しい。前出の調査では、小学校での休憩時間は平均1分だ。連絡帳や宿題のチェック、授業準備、生徒指導などで授業のすきま時間が埋められていく。
「長時間労働の最たる要因が部活です。一応、校長から顧問の希望を聞かれますが、運動部、文化部で3つずつ書くように指示され受け持たないという選択肢はない。同僚からのプレッシャーもあります。部活はやらないとつっぱねたら、いろんな場面で協力を得にくくなるかもしれない」
そう話す斉藤さんは、部活の顧問を打診されたとき「それは教員の職務なのですか?」と、校長ら管理職に尋ねたことがある。途端に場が凍りついたという。
部活が行われるのは放課後、つまり勤務時間を過ぎてから。どれだけ遅くまで働いても、土日の出勤を余儀なくされたとしても、公立校の先生に残業代は出ない。そもそも残業だと認めない法律があるからだ。
「1972年に施行された『給特法』がそれです。非常災害や修学旅行といった学校行事などを除き“原則として時間外勤務を命じない”とされていて、さらに“時間外勤務手当や休日手当は支給しない”と定めています」(内田准教授)
給特法は、教員の仕事には創意工夫が求められ、夏休みなどの長期休暇は自由度が高かったことから、労務時間の管理になじまないと考えられて導入された経緯がある。その結果、公立校の教員は、残業代の支払い義務を定めた労働基準法の規制からはずされた。