8月30日、「樋田容疑者に目鼻立ちのよく似た男が、黒のスクーターに乗っていた」、そう通行人の男性から通報があった。色めき立った府警は男を追跡。
男は制止を振り切り、一方通行を逆走して逃走した。大阪府警のパトカーに追跡されたバイクを運転していたその男は、バス停の支柱に衝突して死亡した。
死亡したのは樋田容疑者、ではなく、男子高校生だった。無免許で、バイクは盗品。だから逃げた……。
卒業文集に書いた友への思い
富田林署から直線距離で約37キロ。兵庫県尼崎市のJR立花駅近くに止めた自転車に、樋田容疑者の自筆のメモがはさまれていたのは、逃走2日目、8月14日の夜のことだった。
付近の防犯カメラには、原付バイクに乗った、樋田容疑者似の男の姿が映っていたという。
「自転車に挟まれていた手紙については、樋田容疑者の知人男性に捜査員が聞き取りに行った際に出てきた話だ。関係性などについてはお答えできない」(捜査関係者)
一部報道によれば、生きるか死ぬか迷っていること、男性の携帯番号を書いた紙を自転車に挟んでおくように要求したこと、警察には見せないように頼む内容などが書かれていたという。
小学校の卒業文集に、樋田容疑者はこう残している。
《いろんなことがあっても友達といっしょにのりこえてもらったときが一番うれしい。でも、ぼくが友達ばっかりたよってもどうにもならない、僕も友達を助けたい。だからずっと友達を大切にしつづける》
そう考えていたころの樋田容疑者の姿を覚えている男性に接触することができた。
「子どものころはいい子やったんやけどな。おじいちゃんが畑をやっておってな。その手伝いをしているのを見たわ。中学ぐらいから悪くなった。悪い友達がおったんやろうな。お父さんを早くに亡くしているから、それも関係あったんかもしれんな。
長男がいて淳也(容疑者)は次男なんや。長男はもう家を出ていると思うけどな。いちばん下に長女がいてな、いまは大学生やったと思うよ。お母さんは足が悪いみたいで、車イスに乗っておってな。息子がこんなことしでかして、ほんまかわいそうや」