「体操を強くしたいという志が根底にあるので、パワハラはありえない。僕はそう思っています。ただ、言葉遣いが荒いので、これを言ったら人が傷つくんじゃないか、そういう想像力を持ってほしい。
自覚してくれればいいんですけど。でも、母は自分のやりたいようにやらなければ選手は強くならないという信念があるので、そこを変えるのは難しい」
パワハラを否定しながらも母親のやり方には多少、疑問を持っていたようだ。
「僕は意見したりしていたんですけどね。でも、本当にパワハラになるような発言はしていないと思います。やると決めたことは貫き通すことが、実績につながっているし。口の悪さは信念の強さを裏づけているともいえます。
なので、周りがちょっと我慢するほうがいいんじゃないかな、と……。僕も子どものころから耐えてきましたから」
直也氏にとっては効果的な指導だとしても、誰もが我慢できるとは限らないが─。また、強引な引き抜きに関しても、明確に否定した。
「こっちから積極的に引き抜いたことはないです。向こうから声をかけてきたら、“よかったらどうぞ”ということはしていますが。声をかけ合うだけなら引き抜きではない。そこの線引きはハッキリしたほうがいいと思います」
指導現場においても、選手との行き違いが生まれたことがあったという。
「相手の立場に立てずに上から言ってしまうところはあるのかな、と。母が選手を指導しているときに“ちょっと言いすぎなんじゃないか”と注意したこともあります。選手が逆に反発してしまうので。
両親とも天才肌で、できない人の気持ちに立つことがちょっと難しい。言いたいことを言ってしまうところがあるので勘違いされてしまう」
結果を出した両親を尊重してほしい
一部のスポーツ紙で千恵子氏の“お金を使って勝つまでやる”というオフレコの発言まで報じられて、ハメられたと感じていると話す。だが、権力が集中して、周りの人が言いたいことを言えない状況があったのではないか?