「私は選手としての立場を、ここで一区切りつけることを決意しました」
卓球女子を牽引してきた福原愛(29)が21日、選手として引退することを自身のブログで発表した。
『愛ちゃん』の愛称で3歳からラケットを握り、試合に負けると悔しさのあまり涙する姿は今でも繰り返しメディアに登場。それだけ愛ちゃんは、国民的な人気選手だった。
そして、幼少期から母・千代さんの熱血指導を受けていたことが、結果的に現在の多くの日本卓球女子選手を育てたとも言われている。
後輩に影響を与えた福原親娘の練習
「幼稚園児の頃から毎晩、自宅の練習場で1000本ラリーをしていたのが福原親子でした。998本までラリーが続いても999本目でミスをすればゼロからもう一度スタートなんですよ。
それができるまで寝ることは許されなかったなど、当時はスパルタのように感じるほど懸命に練習する姿は、競技関係者や保護者らに、早期教育の重要性を気づかせるきっかけになっているんです」
というのは、卓球協会関係者。今の卓球女子を代表する選手たちは、皆、そばに母親の存在がある。
「16年のリオデジャネイロ五輪で、福原とともに団体銅メダルを獲得した石川佳純(25)や伊藤美誠(18)も、競技経験のある母の指導で、幼い頃から厳しい練習をしてきた選手です。
伊藤が競技を始めたのは2歳からですし、母親の美乃りさんは周囲から“厳しすぎる”と何度も説得や批判を受けてきました。でも、メディアで紹介された福原親子の練習風景が支えになって、練習を続けることができたと話しています。その後、多くの有望選手の誕生につながりました」(前出・卓球協会関係者)
福原は、オリンピック後の16年9月に台湾の江宏傑(ジャン・ホンジェ)選手(29)と結婚し、翌17年には女児を出産。家庭に専念するとして試合からは遠ざかっていたが、今回の引退には福原の東京五輪に向けた役員としての仕事があるのだという。
「日本のプロ卓球リーグであるTリーグが、昨年の春に設立され、福原は理事に就任しているんです。世界でもプロリーグで収益があるのはドイツと中国くらいですが、実は日本は卓球人口が約700万人いるといわれ、サッカー人口(90万人)よりも多いんですよ。
収益が見込める分、その盛り立て役、そして中国のプロリーグにも在籍していた福原が、人材が豊富な中国との橋渡しなど、日本に大きな役割を果たすといわれているんです」(スポーツ紙記者)
近年、最強の中国チームの背中が見えてきた日本選手にとっても、東京五輪に向けての人材育成は急務だ。
福原の引退は、リーグが活性化する準備だと言えるだろう。そして愛ちゃんも自分と同じように、娘に指導をする日も近いのかもしれない。
<取材・文/宮崎浩>