“傾く”という言葉
もうひとつの発見は、共演者たちのオーラだという。
「僕は数年前に舞台をやらせていただいたとき、歌舞伎の語源になった“傾く”という言葉を初めて知ったんですね。
この現場に入ってすごく思ったのは、“ここにいる人たちってみんな、普段の生活から傾いている人ばっかりなんじゃないかな?”ってこと(笑)。
振り返る動きや立ち居振る舞いがみなさん、きれいなんですよ。もう、その人が存在している場所がステージ、みたいな感じがする。“これなんだろうなぁ、俳優として僕がもっと学ぶべきところは”と思いますね」
高杉さんは今、主演映画が引きも切らず、最も期待される若手俳優のひとりだ。そんな彼が、演技をするうえでこだわっていることは。
「僕は演技をするとき、地面に立っていることが自分で気持ち悪くならないようにしたい、と思っているんです。そこは映像も一緒ですが、舞台では見えているもの以上をイメージしてもらわなきゃいけないですよね。
劇団☆新感線はセットもすごいのでイメージも湧きやすいんですけど、さらに、そこから先が見せられるようにしたい。それには、自分の立っている場所や状況を自分自身で認識していることが大事だと思っています」
まさに俳優としての成長期まっただ中にいる高杉さんは、闘志を燃やしている。
「今回は、自分の中でもすごく大きな階段を上っているという気がしています。演じる役と二人三脚で成長していければいいですね。まっすぐ純粋に、千秋楽の12月31日までこの役たちのことだけを考えて生きていけたら。
1月1日に見える自分は、成長した姿であってほしいですから。そしてみなさんに“また一緒に仕事がしたい”と言っていただける存在になるのが、今の目標です」
■ONWARDpresents新感線☆RS『メタルマクベス』disc3 Produced by TBS
2006年に劇団☆新感線が脚本家・宮藤官九郎と初タッグを組み、シェークスピアの『マクベス』をメタルロックの生演奏に乗せて大胆に翻案。2206年の荒廃した未来と、バンドブームに沸く1980年代の日本が交錯する熱い世界観が大評判をとった。今回は劇場やキャストに合わせた新演出で、3パターンのキャスト版を連続上演。シリーズ最終章を飾るのが本作だ。上演期間は11月9日~12月31日。詳しい作品情報はhttps://www.tbs.co.jp/stagearound/metalmacbeth_disc3/
(文/若林ゆり)