本当は運がいい
「創作するとき、私の場合は、映画やドラマの予告のように、いろんなシーンが頭の中に浮かんでくるタイプ。予告をつなぎあわせて文章をおこし、あとは登場人物に動いていってもらう感じです。
今回の作品はどれもスムーズにそれができたし、書いていて楽しかった。どの登場人物も自分自身の投影であったり、会話はふだん感じていることだったりしますから」
誰しもみな、悩んでいるときには自分はダメだ、うまくいかないと思い込み、何も見えなくなってしまう。“本当は運がいい”なんてことには気づけない。
「“運がいい”って言ってしまうと、努力していないみたいに聞こえてしまいますが、そうじゃなくて、運って足が速いから、気づかないだけだと思うんです。みんな“好運”を持っているのに、もったいない」
猫のミクジに託された青山さんの温かいメッセージは、登場人物を通じて私たちを勇気づけてくれる。自分は大丈夫だと気づけるように、そっと背中を押してくれるのだ。
「私自身、40歳を過ぎてからのいまの人生が本当におもしろいと感じています。やりたいことができたり、好きな人に会えたり。
自分が何を好きで、何をやったら幸せかということが、はっきりしたからだと思います」
ミクジからのお告げを真っ先に受け取ったのは、青山さんご本人だったのかもしれない。そして次はきっと、この本を読んだあなたになるのかも。
ライターは見た!著者の素顔
2008年6月6日に、51歳の若さで亡くなった作家の氷室冴子さん。今も多くの関係者やファンに慕われ、毎年6月の第1土曜日に偲ぶ会「藤花忌」が行われている。青山さんは、作家デビューを果たした2年前から、それに参列しているそう。
「会場で、氷室さんとともにコバルト小説を盛り立てた新井素子さんや久美沙織さんの姿もお見かけしました。“氷室先生のおかげで、作家デビューすることができました”と墓前にお礼をしてきました」
(文/工藤玲子)