“爆買い”が落ち着き、売り上げにも影響?

 こうした購買欲の変化の中で、中国人旅行客が日本で使う消費金額は落ちたのでしょうか? Yさんのような商品を売る店舗では、一昨年の1月〜3月と昨年の1月〜3月を比べると売り上げの減少が続いたようです。

 しかし、全体的な中国マネーが日本にもたらす経済効果は、昨年の10月くらいからプラスに転じています。

 では、中国観光客は、何にお金を使ったのでしょうか?

Yさん「どうも中国人の興味が“物”から“体験”になったみたいです。“モノ旅行”から“コト旅行”になったとも言われています。それに伴って、訪れるのも、“都心”から“地方”へと移っているんですよ」

 そこで、Yさんのような物販業者が目をつけたのが、日本を体験できる商品でした。

Yさん「例えば新年は福袋が人気でした。福袋は、値段の何倍もする商品が入っている日本の初売りの風物詩。それを買うことで、日本の正月文化を体験できる。化粧品やサプリメントの詰め合わせは、得によく売れました」

日沢「体験といえば、地方のスキー場で、スキーを楽しむ中国観光客も見かけるようですね。スキー場の中には、中国観光客向けのスキー教室を開催しているところもありますし。さらに日本の文化である露天風呂などの温泉も人気で、この時期は、雪を見ながら温泉に入る中国人も多かったと聞きました」

「モノ」から「コト」に消費が移った背景を補足しますと、中国政府が海外商品の関税を強化したために、持ち込むのにお金がかかるようになったことにも起因していると言われています。

モノ消費を落とさないための工夫

Yさん「日本人よりも親子、親族、知人との人間関係を大切にする国民性なので、お土産をたくさん買っていく。そんな中で、質にもこだわるようになったんです。

 ですから接客を丁寧にして、“リピーター”になってもらうようにする。ネットで買い物ができる時代ですから、いいものを丁寧な接客で売れば、帰国後も買ってもらえますし、また旅行に来たときに店に足を運んでもらえます」

 いまや中国人旅行客は年間735万人、消費額はおよそ1兆6950億円だとも言われています(観光庁調べ)。

 中国経済の成長はすでにピークを過ぎているという見方もあり、一時期に比べると元安にはなっていますが、2020年に東京オリンピック・パラリンピックを控える日本としては、中国マネーがもたらす経済効果への期待は大きいと言えます。

 爆買いからの日本ブームを一過性で終わらせないよう、言語の問題、Wifiの問題、クレジットカード決済普及率の問題などにも取り組みながら、国家主導でインバウンド対策を進めています。


日沢新(ひざわ・しん)◎税理士。1987年生まれ。2013年に、税理士の国家資格を取得。税理士事務所NEO FRONTIER TAX OFFICEの代表税理士(https://hizawa-tax.com/)。おもに個人や中小企業、そして相続に関する相談に乗っている。身長185cm、70kg、体脂肪率8%。日々のジムトレーニングで、鍛え抜かれた肉体美を目指す。好きな言葉は「黄金の精神」。