第二に、総合司会・内村光良の見事な立ち回りである。抜群の反射神経で、番組の進行との活性化の両立という難課題をクリア、「近年まれにみるカオス」を華麗に取り仕切った。

 2018紅白の司会布陣は「紅組:広瀬すず、白組:櫻井翔、総合司会:内村光良&桑子真帆」。実はこれまで、この「総合司会」というポジションは、基本的にNHKのアナウンサーが担当していた。しかし、今回と前回(2017年紅白)における内村光良のハマりっぷりを見れば、せめてあと数年、ウッチャンに総合司会を続けてほしいと思う。

 第三に、細かい話になるが、「曲順戦略」の巧みさである。具体的には「演歌を第1部に寄せ、第2部における若者向けJポップを固めることで、最後まで若者を逃さない」という戦略。

 今回出場した演歌系歌手は以下のとおり(歌った楽曲が演歌系以外の歌手も含む)。

・第1部:坂本冬美、山内惠介、丘みどり、天童よしみ、水森かおり、島津亜矢、五木ひろし(20組中7組=35.0%)

・第2部:三山ひろし、北島兄弟、北島三郎、氷川きよし、石川さゆり(30組中5組=16.7%)

 絶対数では7組対5組でそう変わらないが、比率では35.0%対16.7%だから、第2部における演歌系比率は、第1部の半分以下に減っていることになる。これは、演歌系を後半に寄せていた、昭和の紅白の対極を行くものである。

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 この結果、第2部の22~25曲目=松任谷由実(視聴率43.7%・3位)→星野源(43.4%・4位)→米津玄師(44.6%・2位)→MISIA(43.4%・4位。星野源と同率)という、演歌系を介さずに全員が視聴率43%を超えるという「奇跡の26分間」が生まれたのである。

 また、多くの曲で、過剰な演出(けん玉、筋肉体操、イリュージョンなど)を加えることで、Jポップならシニア層、演歌なら若者層を取り逃がさない緻密な工夫がなされていた。このような「曲順戦略」と徹底した演出によって、2018年紅白の高視聴率が形成されたと見る。

「紅白」成功の最も大きな要因

 そして、第四の要因――それは成功への最も大きな要因と思われるのだが――として挙げたいのは、2018年紅白のMVPと言える、桑田佳祐と松任谷由実の存在である。事実、歌手別視聴率においても、サザンオールスターズが45.3%で1位、松任谷由実は43.7%で3位と、非常に高い水準となっていた。

 ここで注目したいのは、サザンオールスターズと松任谷由実が、キャリア初期の曲を選んだことである。

・松任谷由実:「ひこうき雲」(1973年)「やさしさに包まれたなら」(1974年)

・サザンオールスターズ:「希望の轍」(1990年)「勝手にシンドバッド」(1978年)

 特に1970年代=昭和の歌が3曲占めていることに注目したい(「希望の轍」のみ、ギリギリ平成)。「平成最後の紅白」において、桑田佳祐と松任谷由実は、平成を超えて、昭和生まれの曲を選んだのだ。