作品によっては、のどのケアの内容を変える
2010年の日本初演から演出を手がけている小池修一郎演出作品には、『エリザベート』『モーツァルト!』など数多く出演。古川さんにとって小池氏は恩人といえる存在でもある。
「たくさんお世話になっていますし、たくさんチャンスを与えてくださった方なので常に感謝しています。そのぶん厳しく接していただいているなっていう実感もあります。とにかく目がすごいですよね。何も見逃さない目というか、役者を見る目というか、空間を見逃さない目というか、舞台を作る目」
小池さんから言われた言葉で印象深いことは?
「ミュージカルはWキャストやトリプルキャストでやることが多いのですが“同じことをやってもそれぞれ個性は違うから、まったく同じには見えない”ということをおっしゃっていて。あえて違う方向に違う方向に作ろうとしている僕を見抜いて言ってくださった言葉だと思うんですけど、Wキャストをやるうえでずっと心に留めています」
ミュージカル俳優にとって最も大切なことはやっぱり歌。「お芝居をするうえで、歌のことを考えずに感情だけでいろんな声が出せる人はすごくうらやましい」
と語る古川さんは、日々コンディションを整えることを欠かさない。
「ストレッチと鼻うがいは毎日していますね。のどのケアも作品によっては内容を変えてやっています。『モーツァルト!』のようにのどをたくさん使う作品だったら、常に部屋を加湿して、吸入器で1日5回くらい吸入して、のどのお医者さんにも定期的に診てもらってという感じで」
連日満員の観客を満足させるには、そうしたストイックな努力があるのだ。今後挑戦してみたいミュージカル作品について聞くと、
「そういうのはひそかに思うタイプですね。あんまり取材とかでは言いたくない(笑)。でも、ブロードウェイで見た『ディアー・エヴァン・ハンセン』という作品は魅力的だなと思いました。日本で上演するとしたらこの役はこの人とか、キャスティングを考えたりしましたね。1度、NYに2週間くらい行かせていただいたときは、毎日、舞台を見てました。朝早くから並べば手ごろな値段でチケットが手に入るので。そういう環境がしっかりできていて観劇の文化があるのはいいですよね。朝からちっちゃい子からお年寄りまでいろいろな人が並んでいて、すごい光景を見てるなと思いました」
最後に読者へ意気込みとメッセージをお願いします!
「もちろん歌もダンスもブラッシュアップできたらと思いますし、この作品の中にのめり込むように、ロミオという役を思いっきり生きたいと思っています」
シェークスピア不朽の名作をロックミュージックやアクロバティックなダンスを盛り込んだ新鮮な演出で魅せるパリ発のメガヒットミュージカル。演出家・小池修一郎による日本オリジナルバージョン2017年新演出版の再演。ロミオ(古川雄大/大野拓朗Wキャスト)とジュリエット(葵わかな/木下晴香/生田絵梨花トリプルキャスト)の恋と情熱をパワフルなパフォーマンスで描き出す。
東京公演:2月23日~3月10日@東京国際フォーラム/愛知公演:3月22日~3月24日@刈谷市総合文化センター/大阪公演:3月30日~4月14日@梅田芸術劇場メインホール
【公演詳細】http://romeo-juliette.com/
PROFILE
ふるかわ・ゆうた◎1987年7月9日、長野県出身。2007年、ミュージカル『テニスの王子様』不二周助役で舞台デビュー。『エリザベート』ルドルフ役で注目を集め、以降、数々の人気ミュージカルに出演。2018年は『モーツァルト!』ヴォルフガング役で主演を務めるなど若手実力派としてミュージカルに欠かせない存在。
(取材・文/井ノ口裕子 撮影/森田晃博)