容疑者宅を訪ねた。近隣住民によると、周辺は約20年前まで養蚕が盛んで桑畑が広がっていた新興住宅地。源島一家も一戸建てを購入している。インターホンを押すと、白髪まじりの短髪の男性がドアを30センチほど開け、憔悴しきった顔で「父親です」と名乗った。
なぜ、妊娠がわからなかったのか?
裸を見ているのに気づかぬ家族
「本当にまったく気づかなかったんですよ。昨年11月ごろ、家族4人で近場の温泉に日帰りで行ったんですね。そのときに、ボクは見てないですが、あの子の母親も姉も彼女の裸を見ているんです。それでもわからなかったぐらい。
一時は少しお腹まわりが太ったかなとは思いましたよ。でも、本人は“便秘ぎみなんだ”って言っていたし、それ以上は大きくならなかったんでね。12月は風邪をこじらせて寝込んでいたので、あまり見なかったし……」(父親)
警察官が自宅に来た1月25日、父親は在宅していた。
「本人と私が伊勢崎署に連れていかれ、別々に事情聴取をされて、そのまま本人は逮捕されたので、それっきり、話はしていません。ええ、面会もできない状態ですから。本当に妊娠していたか、産んだかについては、もう何がなんだか……」
とうなだれた。そして「ただ……」と付け加えた。
「あとで弁護士さんから聞いたら、妊娠がわかったころ(産婦人科の受診時)には、もう堕ろせない時期だったようです。それから、そのときにはもう、付き合っていた男性とはすでに別れていたみたいなんですよ。うーん、いまから考えると、やはり、ずっと情緒不安定な感じはあったですね」
その男性を自宅に連れてきたことはなかったのか?
「ないです。会っていたら、父親としては反対しませんよ。そろそろ結婚してもいい年ごろですからね」
と話し、ひとりで悩みを抱え込んでいた娘に手を差しのべてやれなかったことを悔やんでいる様子をみせた。
近所の主婦は、「お母さん、お姉さん、妹さん(容疑者)の3人とも、成人女性の平均身長よりも少し低く、ややコロッとした体形をされているので、妊娠しているかどうか余計にわかりにくかったのかもしれませんね。お母さんとお姉さんは一緒にいる姿をよく見かけましたけど、最近、妹さんは見かけなかった」と話す。
1月28日には乳児の遺体の司法解剖の結果が発表された。
死因は判明しなかったが、呼吸をしていた形跡が認められたという。つまり、死産ではなかった。死に至るような明らかな先天的異常や損傷もなかった。今後は、細胞検査などで生まれた時期や死亡した経緯を調べていく。
初産だった容疑者の自力出産は容易ではなかったろう。「便秘」と偽って自宅トイレで産むことはできても、赤ちゃんを授かることは、ひとりではできない。赤ちゃんの父親は何をしているのか。
やまさき・のぶあき 1959年、佐賀県生まれ。大学卒業後、業界新聞社、編集プロダクションなどを経て、'94年からフリーライター。事件・事故取材を中心にスポーツ、芸能、動物虐待などさまざまな分野で執筆している