肌を守るのは保湿とUVカット
それでは、私たちが日々せっせと行っているスキンケアは何の意味があるのか!?
「スキンケアの目的は肌の健康維持にあります。肌は常に外部からの刺激を受け続けているため、その刺激から肌(肌の細胞)を守る必要があるのです。そのために最も有効なのが保湿です。水分補給ではなく、あくまでも肌から水分の蒸発を防ぐための保湿ということです」
肌の表面は敷き詰められた角質の隙間に水分を保持し、外部からの細菌などの侵入を防ぐバリア機能を持っている。このバリア機能が壊れるのを防ぐのに必要なのが保湿なのだ。そしてもうひとつ大切なのが、紫外線対策のためのUVカットだという。
「紫外線は肌細胞を破壊し、遺伝子に傷をつけ老化を加速させるため、UVカットはスキンケアに欠かせません。つまり、化粧品は保湿と紫外線防止を考えてシンプルに選べばいいということです」
北條医師によると高価な化粧品でなくても保湿やUVカット効果は期待できるという。
「私の知り合いの皮膚科の女医さんは、美容液やクリームではなくワセリン派が圧倒的多数。高級化粧品を否定するつもりはありませんが、化粧品はその効果と金額が必ずしも比例するものではない、ということは知っておくといいでしょう」
またメイクを落とすためのクレンジングや洗顔選びも正しいスキンケアには重要だ。特に強力な洗浄力のあるクレンジング剤には界面活性剤が多く含まれる。界面活性剤はメイク汚れと一緒に肌の脂分まで洗い流すため、できるだけ界面活性剤の少ないものを選ぶのがポイントになる。
「大部分の成分表示は『界面活性剤』と記載せず、PEG(ポリエチレングリコール)、PG(プロビレングリコール)、TEA(トリエタノールアミン)、BHT(ジブチルヒドロキシトルエン)などと表示されているのでチェックしてみてください」
美肌や若さの維持を人生の目的にしない
40代、50代の美肌は、高価な美容液ではなく、保湿、紫外線対策、全身の健康によって維持される。「スキンケアにとどまらず、全身の若さを保つ健康的な食生活や適度な運動などの生活実践が肝心です。女性にとってキレイでいることは重要なことだと思います。でも、それはあくまでも人生を豊かにするための道具です」
美肌や若さの維持が人生の目的になってしまうと、あふれる美容情報に踊らされ、本当は必要のないものまで手にすることになりかねない。スキンケアは保湿とUVカットで十分だという「捨てる」スキンケアを基本に、自分の肌の状態や財布と相談しながら上手に付き合うのが賢い選択といえるだろう。
ライターは見た!著者の素顔
北條医師のオフィスでは、肌細胞を保存、抽出、培養し、移植をする最先端の肌の再生医療を行う。「50代がいちばん多く保存されていて、40代、60代と続きます」とのこと。完全オーダーメードの医療のため、費用は1回で40万円以上。もちろん細胞の保存にも保管料が別途必要だ。お金持ち相手のお仕事なので、さぞかし北條医師も……と思いきや、寸胴鍋を持参して手作りカレーを社員に振る舞うのが恒例だという、気さくで親しみやすい一面を教えてくれた。
(取材・文/アリス美々絵)