都心の一等地にそびえるタワーマンション最上層での生活、憧れている人も多いのでは?
「しかし、子どもの学びにとっては決していい環境とはいえないように思いますね」
こう懸念を示すのは、プロ家庭教師集団『名門指導会』代表の西村則康さんだ。
タワマンの、それも高層階ともなれば億単位の物件も少なくない。それだけに購入したオーナーは、社会的地位が高く、裕福で、高学歴かつ人一倍、教育熱心な人が多く見受けられる。
それなのに、タワマン高層階に住む子どもたちは「なぜか学力不振になりがち」と西村さん。原因は、お父さん、そしてタワマン高層階という住環境にあるという。
「まず、こうしたお子さんのお父さんは、子どもの成績について、経営やマネジメントする感覚で考えがち。ともすればPDCAサイクルで成績を上げようとするのです」(西村さん)
『PDCAサイクル』とは、ビジネスの現場で行われている手法のことだ。業務改善や成績向上にはPlan(計画)・Do(実行)・Check(チェック)・Action(改善)が大切と考え、この4段階を随時繰り返すことで底上げを図る。
タワマン高層階に住む学力不振児のお父さんは、子どもの成績向上も業務改善と同じようにとらえ、“PDCAサイクルを繰り返せば必ず向上する”と考える人が多いというのだ。
「ところが子どもの成績向上というものは、業務改善よりもずっと複雑です。
例えば、子どもの知識をチェックして、なければ教える。すると成績が改善されるかというと、そうはならない。その知識をもとに考えようとする意欲がないと、正解することはできないのです。
そして意欲を持つには、生活で知り得たさまざまなことを“面白い!”と思う気持ちがないとダメ。面白いと思う気持ちはどこからくるかというと、知的好奇心と、“わかった!”という感動や快感経験の蓄積。これがなければ生まれてきません」(西村さん)
ところがタワマン高層階居住のお父さんは、実行力と経済的余裕があるだけに、子どもに先回りして準備してしまう人が多い。
「例えば、小学校で運動会があるとしましょう。そうすると、速く走れるように家庭教師を雇うのです。
こうした子は運動会でビリになることもありませんが、ビリから1等になった感動や快感もない。さらには常に準備されていて失敗しないから、そのうち変な万能感を持って、“小さな王子さま”になってしまうのです」(西村さん)