白鵬

 3月24日に千秋楽を迎えた平成最後の大相撲三月場所は横綱・白鵬が42回目の優勝、しかも34歳での全勝優勝という偉業を成し遂げた。しかし、その優勝のインタビューで白鵬が三本締めをしたことが問題になっている。

99%の疑問

 横綱審議委員会の矢野弘典委員長が「手締めというのは行事が全部終わった後にやるもの。優勝し、横綱といえど一力士としてそういうことをやれる立場なのかという疑問」と、優勝翌日に開かれた委員会で発言した。

 委員長はさらに「話題になり、いろいろな意見が出ましたが、違和感を覚える人が多かった」「優勝した横綱といえども、そういうことをやれる立場なのかという疑問がある。会場中が手拍子でいっぱいになってビックリしました」などと発言したそうだ(日刊スポーツより)。

 これを受けて相撲協会は白鵬と師匠の宮城野親方を呼び、事情を聞くと、白鵬「平成最後(の場所)を盛り上げたかった」と答えて謝罪した。しかし相撲協会は今回のことを「コンプライアンス委員会(青沼隆之委員長=元名古屋高検検事長)に問題の調査などを委嘱すること」を決めたという。

相撲協会のコンプライアンス規定では、第5条『違反行為』の第7項に『土俵上の礼儀、作法を欠くなど、相撲道の伝統と秩序を損なう行為』と定めている。まずは違反行為にあたるかどうかを判断したうえで、違反行為だった場合は処分についても検討する。八角理事長(元横綱・北勝海)はコンプライアンス委員会からの答申を受け、臨時理事会で審議する」(読売新聞より)のだとか。

 正直これを読んで、私は99%疑問しかない。

 1%の同意というと、手締めというのは行事すべてが終わった後にやるものというのはそのとおりだ。じゃ、「そういうものなんだよ、以後、そうしてね」で、この件は終わりであるべきだ。

 これはそこまで大したことじゃないし、ましてやテレビ中継を見ていた人ならお気づきであろうが、平成最後の場所の三本締め、そりゃ盛り上がってましたよね? パパパン、パパパンとみんな楽しそうで、私もテレビの前で楽しく明るい気持ちにしてもらいました。

 それに、その同意の1%さえ、あやふやだ。

 じゃ、横綱に、しかもその日は取組中に右腕の筋肉断裂をした横綱に、「これから番付に名前の載る前相撲を取る10代の新人力士たち」と並んで待機して、表彰式が終わり、最後の最後に行われる神送りの儀(土俵の神様を送る儀式/前相撲の力士たちが若い行司を胴上げする)まで一緒に残り、それから三本締めしなさいとでもいうのか? お客さんも、もう、そのころにはほとんど帰ってしまって誰もいないのに? テレビの中継も終わってるのに?

 常々言われているように、大相撲はスポーツであり、神事であり、興行であるという多様性のあるものだ。興行であるなら見る人を楽しませるのもまた、力士の立派な仕事であり、サービス精神旺盛な白鵬が平成最後の場所を盛り上げようとやったことだと、相撲ファンの私は理解している。

 平成の相撲を担ってきた人が三本締めする、それはふさわしいことにも思える。はたして興行の部分のサービスを果たした横綱に疑問とか、立場とか、そういうことに目くじら立てるのが、横審の仕事なのだろうか?