(2)遺留分の対象財産の評価方法を知る
日沢「遺留分の対象となる財産が不動産だった場合は時価で評価します。そのときどきの相場の価格ですね」
Aさん「先生、不動産の時価ってあやふやじゃないですか?」
日沢「はい。不動産はよく時価で問題になったりします。遺留分を侵害しているほうは安く、侵害されているほうは高く計算したほうが有利ですからね。これは実際の売買事例や不動産鑑定など、さまざまなアプローチで落としどころを見つけていくことが多いようです。不動産以外でも、一般的に時価が公表されていない財産すべてにあてはまりますね」
(3)遺留分の割合を知る
Aさん「財産のうちどれくらいが遺留分になるんですか」
日沢「遺留分は特殊な例を除いて、民法で割合が決まっています。法定相続分の2分の1です」
Aさん「うちは妻と子ども2人ですから、その場合はどうなるのでしょうか。法定相続分は、妻が2分の1、子2人がそれぞれ4分の1ずつという話でしたよね」
日沢「Aさんの場合ですと、下記のとおりとなります。仮に遺留分対象財産の価格を1000万円としましょう」
(1)奥さま 法定相続分1/2 ×1/2 =1/4が遺留分
→奥さまの遺留分は1000万円×1/4 =250万円となる
(2)お子さま 法定相続分1/4 ×1/2 =各1/8が遺留分。
→お子さまの遺留分は1000万円×1/8 =125万円となる
ちなみに、被相続人の兄弟姉妹には遺留分はありません。兄弟姉妹は法定相続の順位が最下位であり、被相続人とは関係が希薄なケースも多いですからね」
遺留分請求にはタイムリミットがある
Aさん「遺言書を遺すときはしっかりと遺留分に配慮して書くということが大事なんですね」
日沢「はい。最後に遺留分請求にはタイムリミットがあるので気をつけなくてはなりません。それは被相続人が亡くなったあと、遺産を少なく分配された人が遺留分を侵害されていると知ったときから1年間です」
Aさん「知ったとき、というのは?」
日沢「例えば財産をひとり占めしようとした相続人がいた場合、その遺言書を全員に開示せず、ひとりで財産を分割してしまうケースが考えられますから、遺留分が侵害されていることを知ったときから、ということですね」
また、めったにありませんが、もし相続があったことを知らなかったとしても、亡くなった日から10年間(除斥期間)経過すれば、遺留分は失効します。これも覚えておきましょう」
Aさん「わかりました。ありがとうございました」
日沢新(ひざわ・しん)◎税理士。1987年生まれ。2013年に、税理士の国家資格を取得。税理士事務所NEO FRONTIER TAX OFFICEの代表税理士(https://hizawa-tax.com/)。主に個人や中小企業、そして相続に関する相談に乗っている。身長185cm、70kg、体脂肪率8%。日々のジムトレーニングで、鍛え抜かれた肉体美を目指す。好きな言葉は「黄金の精神」。