ビリギャルの使命を全うするために
「ビリギャルは奇跡の話でもなんでもない。誰でも死ぬ気で頑張れば道は開ける、夢は叶うってことを伝えたいんです。話題になっていちばん残念だったことは、“もともと頭がよかったんだ”って言われること。そうじゃない。みんなそうやって、“挑戦する”ってことをしてないからなんだ、って伝えたい」
特に高校は、人生が変わる重要な時期だと話す。
「例えば就職するのか、受験を頑張るのか、人生を左右する時期だと認識してほしい。そしてそこに関わる周囲の大人、つまり親、学校の先生はめちゃくちゃ重要なんです。どう向き合うかで子どもの人生が大きく変わっちゃう」
全国の学校を講演で回るうちに、実際の教育の場に興味を持った小林さんは、昨年、北海道の札幌新陽高校で“インターン”を経験した。
「一般企業から来た方が校長を務めるユニークな学校で、私が校長のフェイスブックの日誌を読んでいてファンだったことから機会をいただきました」
正式な教員ではないため無給での在籍だったものの、それでも保健体育の授業で性教育を教えるなど、教壇に立つこともあった。
そして、学生時代「嫌い」だった先生は実は「生徒の未来のために働いている人」と気づいたのだという。
また、ここでもある生徒が、ひとりの先生との出会いによって、たった3か月で別人のように前向きに人生をとらえていく姿を目の当たりにして、高校生の変われる力を感じた。
「誰だって天才なんです。たとえ勉強じゃなくたって、何かあるはず。もっと認めて応援してくれる大人、“大丈夫だよ”と言ってくれる大人が増えればいいと思います」
かつて坪田先生が自分にしてくれたことを、今度は自分が伝えていくことを決めた。
「坪田先生に初めて会ったとき、キラッキラな大人だって思ったの。ああ、この人、人生楽しそうだな。いろんなことを知っていれば人生楽しくなるんだろうな。私もこんなふうになりたいと思ったんだ。そこから私の人生はバーッと変わっていった。
今は、先生みたいな大人になりたいし、あんな人をもっと増やしたい。そのために大学院入って教育学を学ぶし、そのために本を書くし講演会もする。もちろん、自身の子育てだっていつかはしてみたい。
ビリギャルって、たかだか受験しただけなのに、ずっと“なんで私なんだろう”ってわからなかったけど、今なら何となくわかる。自分がしっかり変わって、たくさんの人のためになるようなことをしないと罰が当たるなって思ったとき、教育を基礎からちゃんと学ぼうと思った。“ビリギャル”が私にきっかけをくれたんです。私にしかできない、使命なのかなって」
この4月、小林さんは大学院に入学して教育学を研究する。元ビリギャルは新たな夢に向かって、また猛勉強に励んでいる。