医療ドラマでは、扱うテーマに沿って産婦人科や精神科、小児科など診療科目が分かれ、さらに舞台も離島や船上、山岳地帯、ドクターヘリなど病院だけではなくなった。

 そして、“ついにそこに行きついたか”と思ってしまった、放射線技師。

 これまで放射線技師を主人公として扱った日本の連続ドラマは存在しなかった。

肝心のドラマ第1話は

 第1話は頭部のMRI検査を行ったが、その画像の一部に黒いモヤがかかっていて見えない。主人公はその箇所を復元することで隠れていた病巣を発見、患者を救うストーリーとなっていた。

 だが、画像の復元方法について主人公が「湿布の薬面を保護するシール」を見た瞬間に解決策がひらめいた理由や、写真が復元できた原理もわからない。

 ただただ、必死にキーボードを打ち続け、パソコン画面に数字が並び、やがて画像が復元するのだが、映画『マトリックス』のようなSFっぽい演出を理解できた視聴者はいるのだろうか。ドラマだから、多少の演出はあるにしても、現実から乖離(かいり)しすぎたらしらけてしまう。

 メスや鉗子(かんし)を使った見ていてわかりやすい外科手術とは打って変わって、放射線技師というテーマになじみがなさすぎて、肝心の医療シーンが何をやっているのかがわかりづらかった。

 さらに言ってしまえば、前者にあるような「生死をかけた手術シーン」という切迫感のある見せ場がないということも、問題かもしれない。手術こそ医療ドラマの醍醐味(だいごみ)のひとつではないだろうか。

 もちろん人間ドラマがあるのは認めるが、病気を発見するまでがメインであとは投薬でサクッと助かってしまい、拍子抜けした感は否めない。

 “視聴率のとれる”医療ドラマだからといって、あまりにも専門性が高くなると、難解になり、視聴者離れにつながる可能性もある。

 実際に放射線技師をしている視聴者からどんなツッコミが入るのか、気になるところだ。

 もしこのドラマがヒットしたら『臨床検査技師の女』とか『調剤薬局の事件簿』なんて、次なる“裏方ドラマ”が出てくるやも。

<芸能ジャーナリスト・佐々木博之>
◎元フライデー記者。現在も週刊誌などで取材活動を続けており、テレビ・ラジオ番組などでコメンテーターとしても活躍中。