彼女を“お断り”しようと思った理由
すると、孝夫さんは言いました。
「すいません。僕の中で彼女への見方が、お見合いしている間に二転三転したものですから」
まず女性は、お見合いに遅れてきたそうです。それは、5、6分程度だったのですが、遅刻の理由が、「カフェに入ろうとしたら、LINEが入ってきてしまって」というものでした。
「なんのLINEかはわからないけど、即レスしないといけないことだったのかな、と。それで5分遅れるって、どうなんだろうと思ってしまいました」
お見合いに遅刻は厳禁。10分前には到着しているというのが不文律です。
「ただ話をしてみたら、すごく明るい人でサッカーや野球などのスポーツ好きという趣味も一致して楽しかったんですね。スポーツの話で盛り上がっていくうちに、遅刻して来たことは僕の中で帳消しになっていたんですよ」
そして、カープの話になり、「今度、一緒に試合を見に行きませんか?」と言われ、「はい、行けたらいいですね」と、相槌(あいづち)を打ってしまったというのです。
しかし、また気になることが出てきました。お見合いの後半になってくると、最初は“ですます調”で話していた言葉遣いが、だんだんとタメ口に変わっていったというのです。
「それって、こちらに親しみを持ってくれたからだと思うんですが、なんか“男慣れ”している気がしちゃったんですよね」
そして、お見合いが終わり、お会計の段となりました。二人で席を立ってレジに向かうと、お金を払う孝夫さんの後ろをスッと通って、波江さんはお店の外に出て行きました。
「僕が払い終えて店の外に出ると、『ごちそうさまでした』の言葉もなく、『ぜひ、カープの試合に行きましょうね』と言われたんです。『ごちそうさまでした』の言葉もなく当たり前の顔でレジの前を素通りされて、“なんだかなぁ”と思ってしまったんですよ」
お見合いのお勘定は、男性持ちというのもお見合いの暗黙のルールです。しかし、当たり前の顔でそれをされてしまうと、“男慣れ”に続いて“おごられ慣れ”“お見合い慣れ”していると思われてしまいます。
“見せ財布”という言葉があるのをご存じですか?
男性とお茶や食事をした後に、「あの、お支払いは?」と、バッグの中から財布を取り出してチラ見せさせる。男性はこれを女性からされたのとされなかったのでは、払うときの気持ちが大きく違うのですよ。そして、「ごちそうさまでした」の言葉も忘れてはいけません。