老後も働くことがオススメ

 年金が目減りしていく将来に、われわれはどう備えればいいのだろうか?

「いちばん大切なのは借金をなくすこと。そしてしっかりと貯金することです。経済的知識の乏しい庶民が、投資はしてはいけません。老後の資金対策として、銀行や郵便局ですすめる投資信託の46%が“損”をしていると、金融庁が昨年3月に報告しています。あれから株価は相当下がっていますから、現在はもっとひどい状況でしょう」

荻原博子さん
荻原博子さん
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 もし年金を増やしたければ、自営業の人なら付加年金に加入しよう。これは国民年金保険料に月400円をプラスして納めるというもので、10年間支払うと年2万4000円の加算額を死ぬまでもらえる。年金受給後、わずか2年で払った金額を回収できる計算なのでかなりお得だ。

「もし仕事を続けていくのならば、65歳以降に年金を受け取る“繰り下げ受給”を。1か月遅くするごとに0・7%が加算されます。上限の70歳まで繰り下げした場合、総受給額の損益分岐点は81歳。つまり81歳以降まで生きればお得ということです」

 だが、これらの取り組みより、老後の資金作りにもっとおすすめしたいことがある、と荻原さん。それは“老後も働く”ことだ。大和ネクスト銀行の調査によると、働くシニアの手取り額は月収5万~10万円未満が23・8%と最多。少ないとはいえ年金と合わせれば、生活に余裕が生まれる。

「働くことの魅力はお金だけではないんです。人間関係も生まれ、社会とつながっていられる。自由なお金があればイキイキと余裕を持っていられます。なにも、がむしゃらに働く必要はありません。時給700〜800円台の仕事でも十分でしょう」

 老後の職場としておすすめなのは、介護施設。多くの高齢者がお世話になるところだが、施設のよしあしは外見だけではわからない。事前に働けば実際の様子が見えてくるし、さまざまな情報が得られ、そこで働く人たちの本音や人柄もわかってくるからだ。

 シニアが働くうえで、気をつけたいことがある。

「夫が60歳以降も嘱託などで会社に残り、働く予定という奥さまもいるでしょう。その場合は要注意。年金と給料の合計が月28万円を超えると、65歳以前でも受け取れる厚生年金の一部がカットされてしまうのですが、実は、これを避ける裏ワザがあります。働く時間を正社員の4分の3未満にとどめてください。正社員からはずれて、社会保険に加入しないことです

 ただし、この在職老齢年金の廃止を国が検討中という報道も。今後も年金制度の変化には注意が必要だ。


《PROFILE》
荻原博子さん ◎経済ジャーナリスト。大学卒業後、経済事務所勤務を経て独立。“家庭経済のパイオニア”として活躍。著書に『年金だけでも暮らせます』など