いずれも放送回数は100回以下で、決して大量出稿ではないが、効率よく支持を集めた。モニターの感想から、「5人のキャラが面白い」「かっこいい俳優さんたちが個性豊かに出演しているので何回見ても飽きない」「5人それぞれの洗剤への思いや服装を見ていると楽しいです」など、個性の異なる5人のキャラクターが多くの人の関心を集めたことが分かる。

 公式サイトによると彼らのプロフィールはそれぞれ「“スダくん”(菅田将暉)=人並みはずれた嗅覚の持ち主。洗剤の消臭力にこだわる、明るいオタク」、「“スギノ”(杉野遥亮)=人にも衣類にもやさしいピュアボーイ。ちょっとドジなみんなの弟分」といった具合だ。

 単に人気の俳優をそろえるだけではなく、既存のタレントイメージを生かしてそれぞれのキャラクターを作り込み、彼らを通して“落ちにくい汚れ0” “生乾きのニオイ0”“洗剤残り0”といった商品特長を印象づけることに成功した。

大胆なターゲット設定に消費者が好感

 タレント起用の効果は商品特長を出演者のキャラクターに重ねてわかりやすく伝えただけではない。1987年に誕生した“アタック”というロングセラーブランドをまったく新しいものに見せる役割も果たした。洗濯洗剤の広告キャラクターに男性タレントを起用することは昨今そう珍しいことではないが、旬な若手俳優が一気に5人も登場したのは画期的といえる。

 顔ぶれから考えると、酒類や通信系サービスのローンチキャンペーンであれば想像の範囲内かもしれないが、まさか洗濯洗剤とは思わないだろう。

 同社はアタックZEROのコアターゲットを“洗濯に深い関心を持たないミレニアル層”に設定しているとのことで、そもそも「洗濯洗剤の広告には主婦の共感が不可欠」といった固定概念を大胆に飛び越えている。

 新商品の開発やキャンペーンを企画する際にはターゲットを想定することが基本だ。誰にどのように届けたいのかを具体的に考えることは重要だが、その反面綿密に設計するがあまり自ら門戸を狭めてしまうという皮肉はよくあることだ。

 商品の認知度を上げて購買層を拡大するためにキャンペーンを実施するはずが、その可能性を企業自ら限定してしまいかねない。一方、アタックZEROは商品から最も遠い層をターゲットに据えた遠投力のある施策でブランドのフルリニューアルを印象づけ、多くの消費者との距離を縮めることに成功した。