“五輪のために”排除される外国人
長期収容される外国人はダヌカさんだけではない。
日本には17か所の入管施設があり昨年末時点で、そのうちの7施設で1246名を収容。最多が東京入管の465名、それに次ぐのが牛久入管の325名だ。
牛久入管の被収容者の約8割が難民認定を申請した人たちである。20年以上も被収容者との面会を続ける市民団体『牛久入管収容所問題を考える会』の田中美喜子代表は、「牛久入管では半年以上の長期被収容者の割合が9割以上で、306人もいる。長い人で5年。すさまじい人権侵害です」と強く批判している。
1年以上収容の数字を見ても278人で、2013年2月時点の97人の3倍弱もの人数だ。これは、仮放免を出さないことを意味する。NPO法人『難民支援協会』によれば、牛久入管で'16年に許可された仮放免378件に対し不許可は375件。それが1年後には、仮放免224件に不許可が803件と、後者が断然多くなっている。
なぜ長期収容が増えるのか。牛久入管に問いただすと、職員は「上からの指示があるので」と回答した。
確かに指示はある。'16年4月7日付で当時の入国管理局長が全国の収容所長にこんな通知を出した(概要)。
《2020年の東京オリンピックまでに、不法滞在者等『日本に不安を与える外国人』の効率的な排除に積極的に取り組むこと》
さらに'18年2月28日には、《重度の傷病等を除き、収容を継続せよ》との指示を出しているのだ。
「確かに入管がよりひどくなったのは'16年です」
と話すのは、埼玉県川口市に住むウチャル・メメットさん(28)、トルコ国籍のクルド人だ。
クルド人は、トルコでは差別と弾圧の対象になっている。ウチャルさんも小学生のとき、クルド語をしゃべっただけで教師から殴られ、大人のクルド人も反政府デモへの参加だけで警察で拷問されることもある。
ウチャルさんは'08年、18歳で「平和な国」日本へと飛び、成田空港で難民認定申請をした。すぐに成田空港の収容施設、次いで牛久入管へと送られ、合計半年を過ごす。仮放免されると、'14年に日本人女性の嶋津まゆみさんと出会い、翌年1月に入籍した。
日本人との結婚でも、ウチャルさんに在留資格は与えられず、身分は「仮放免」のままだ。