去る6月13日は、野際陽子さんの三回忌だった。
「野際さんは、'17年にテレビ朝日系で放送された昼ドラマ『やすらぎの郷』出演中に体調を崩して緊急入院。'14年に発症した肺腺がんから回復していたものの、急に悪化したんです。
最後の収録となった5月7日は鼻にチューブをつけて現場入り。苦しそうなのに、カメラが回ると一瞬で女優の顔になったそうです。最後まで復帰に意欲を示していましたが、願いは叶いませんでした」(スポーツ紙記者)
犬好きとして知られていた野際さんの愛犬は、今も元気に散歩しているという。
「野際さんが亡くなる何年か前に生まれたシェットランドシープドッグを入れて、計3匹いるかな。今は外で散歩せずに、マンションの中庭を歩かせているようです」(近所の愛犬家)
野際さんが犬と同じくらい愛したのは花だった。近所にある生花店の店員が語る。
「野際さんは40年も通ってくれたの。亡くなる数か月前まで、しょっちゅう来てくれました。水彩画で花を描くのがご趣味で、ナデシコ、ホトトギス、ススキといった花が好きでしたね。
ワインとチーズを持ってきて“これを入れて花のバスケットを作って”とよく頼まれました。お世話になっている方への楽屋の差し入れに持っていかれていましたね」
深い帽子をかぶって地味な服装だったので、居合わせた客にも気づかれなかった。
「3年前に、野際さんが海外種の珍しい朝顔の種をくれたの。自宅のベランダで育てていたんだけど、今年はそのプランターの上に別の鉢を置いてしまったんです。
ところが、ある日その鉢の脇からスルッと朝顔が出てきました。花を愛した野際さんの魂かな? なんて思い、支柱をさしてあげたら、どんどん伸びてきて、今はきれいな朝顔が咲いています。その花を見るたび、野際さんの笑顔を思い出しますね」(前出・店員)
現在、自宅マンションには、野際さんのひとり娘で女優の真瀬樹里が暮らしている。仏前の花は絶やさない。
「三回忌には黒柳徹子さんが花を届けてくれました」
野際さんは大好きな花に囲まれて眠っている。愛犬も以前のままの生活だ。
「犬はずっと好きで、私が生まれる前から飼っていました。犬は母と一緒に寝ていましたが、今は私と寝ています」
真瀬は'17年10月〜12月に放送されたドラマ『トットちゃん!』(テレビ朝日系)で、野際さん役を演じた。
「やりにくいどころか、よくわかっている人物ですから、むしろやりやすかったですね。こんなこと言っているときは何を考えているとか、だいたいわかりますから。ただ、母はピーンとした高い声なんですが、私は低音でハスキーなので、そこは苦労しました。母は声にうるさく、ダメ出しの9割は声のことでした」
同じ女優の道を歩んだことで、母の偉大さに気づいた。
「尊敬する先輩なのは大前提ですが、いいところは断片的に見習おうと思いました。すごいと思うのは、芝居をしているのに、演技をしているように見えないところですね」
家では毎日、仏壇にお線香を供えている。
「寂しいですね。会いたいし。しょっちゅう“そばにいてね”とは語りかけています。朝は“おはよう”、出かけるときは“行ってくるね”と声をかけます。“今日は大事な仕事だから、見ててね”と、気合を入れることもありますよ。マンションはひとりでは広すぎて寂しいですね。ワンちゃんがいますので、夜は犬と一緒ですが……」
野際さんの魂は愛犬たちと花の中に宿っている。