交番そのものを最先端化することをすすめるのは、日本防犯学校の梅本正行学長だ。

「不審者を発見するAIカメラを取り付けたり、警察官に何か起きたときも無線連絡ではなくワンアクションでつながるボタンを導入するのがいいと思います。危険を知らせるシステムが無線というのは危機管理がなっていない」

 と指摘する。特に不審者発見こそが事件を未然に防ぐ最大の防御と位置づけ、

「これまでほとんどは、交番の外で襲われています。ですから、交番内の強化というよりも、不審者の発見。今回も犯行前に容疑者が、7、8回交番前を行き来していますよね。AIカメラが導入されていれば防げたのではないかと思います」

 と力説する。さらに、

「ホルスターから拳銃が抜けないようなタイプを、早く導入すべきです。都心ではもう導入されています。引っこ抜けないタイプのホルスターを導入していなかった大阪府警の危機意識の薄さが残念ですね」

 と結果的に手遅れになってしまった導入不備を叱る。

 前出・吉川さんは、

「すでにホルスターは配布中で、まだ全体に行き届いていないのが現状です」

 と、ちょうど端境期にあったことを説明する。

 装着している警察官以外は抜き取ることが難しくなるという拳銃ホルスター。

【写真上】昨年6月に襲撃された富山・奥田交番【写真下】昨年9月に襲撃された東仙台交番
【写真上】昨年6月に襲撃された富山・奥田交番【写真下】昨年9月に襲撃された東仙台交番
【写真】事件現場の吹田市・千里山交番

「それ以外は特に強化される部分はない。持っているものは警棒と手錠と拳銃と無線。これ以上、増やしてしまうと逆に身動きが取りにくくなってしまう」(前出・吉川さん)

 とはいえ、

「いちばんいいのは人員増加」(前出・梅本さん)、

「警察官が単独にならないように、配置や人員などを警察庁でも検討していると思います」(前出・吉川さん)と期待されるマンパワー増強。

 今回の交番襲撃事件のように、警察官がひとりになったときを見計らって「自分が持っている凶器を使えば拳銃を盗めるだろうという気持ちがあって向かっていったと思います」(前出・吉川さん)と犯人が狙いをつければ、その段階ですでに警察官は不利になっていることになる。

 市民を装えば、警察官にギリギリまで近づける。凶悪犯めいた言動があれば、警察官の脳内の警告灯も点滅するが、今回の飯森容疑者は、冒頭の証言のように“普通の人”だった。

 勤務先のゴルフ練習場も、

「無遅刻、無欠勤です。特にお客様からのクレームや苦情もなかったですし、ほかの従業員からのこれといった問題指摘もありませんでしたから。人柄は至ってまじめ。清掃アルバイトとして週5日、コツコツと仕事をやってくれていましたね」

 と、まじめさを強調する。

 そんな普通オーラを出した人間が突如、交番襲撃犯に豹変する怖さ。次の事件が起きないためにも、交番の防衛力強化の必要性に警察は迫られている。