光本さんの父は借金をした母を憎んでいたので、「お母さんに会いたい」とは口が裂けても言えなかった。だが、そのぶん思いは募った。高校に入り、会いたい一心で貯金をし、母のもとを訪ねると、母は悪びれもせず彼氏を伴って現れた。
「ごめんね、のひと言もなく“エー!”って思ったけど、母はこういう人間なんだ、だから離婚したんだ、と納得できた。現実の母を知ったから次に進めたんです」
離婚の裏で傷ついている子どももいる
'11年度からは年に1度、2泊3日でキャンプを行っている。対象はひとり親の小学4年生から中学3年生。みんなでカレー作りなどの自炊をし、親の離婚について話し合うワーク活動も行う。
「あの先生、変な顔だね」「ほんと、キモイ~」
初対面の子ども同士が顔を合わせると、まず悪口で盛り上がることが多い。
「自己肯定感の低い子は、褒められるとか認めてもらった経験が少ないから、最初に否定から入る。両親が否定しあう様子を見てきたことも大きいと思います。
でも、それは健全じゃない。ポジティブな言い方に変えるため、小さなことでも褒めるようにします。ボランティアの大学生たちも子どもたちを見ていて、自分もそうだったと気がつく。親の離婚に傷ついた自分を客観的に見られるようになるんですね」
毎回20~30人が集まるキャンプの参加費用は無料。面会交流支援も、今年3月から遠方を除き無料にした。費用は助成金や寄付でまかなっている。光本さんが何年もかけて行政や民間団体にアプローチした成果だ。
「私もこの支援を通じて救われたし、自己肯定感を育ませてもらった。親が離婚して大変だった経験も、いま困っている子どもを助ける役に立っていると思えば、プラスに感じられますから」
設立以来、ウィーズの活動は忙しくなる一方だ。軽い気持ちで離婚する最近の風潮について、光本さんはどう見ているのか。
「離婚がダメではない。でも、その裏で傷ついている子どもがいることを忘れないでほしい。子どもの目線に立って考えることを忘れている親御さんが多いので、もう少し冷静に考えてもらいたいです」
光本歩 ◎NPO法人「ウィーズ」代表理事。第三次静岡県ひとり親家庭自立促進計画策定委員。1988年生まれ。13歳で親が離婚。東京福祉大学教育学部中退後、離婚した子どもたちのトータルサポートをスタート。テレビ、新聞、ラジオなどメディア出演多数