女性の社会進出の先駆けともいえる会社

 失うものがない“無敵の人”に奪われた命は日本のアニメーションの未来をになう宝だった。惨劇の現場となった京都アニメーション(以下『京アニ』)は、1985年に設立され、'06年『涼宮ハルヒの憂鬱』、'09年の『けいおん!』などのテレビアニメ作品で国内外を問わず多くのファンを獲得。'16年9月に公開された『映画 聲の形』では第40回日本アカデミー賞優秀アニメーション作品賞を受賞している。

京アニの始まりは、手塚治虫プロから派生した虫プロに勤めていた女性アニメーターが京都に引っ越してきてそこで知り合ったご近所の主婦たちと一緒に“家計の足しになれば”とジブリなどの大手制作会社の下請けから始められたものなんです。社屋内に託児スペースもあり、女性の社会進出の先駆けともいえる会社なんです。ですから今でも女性スタッフが多く、業務委託や契約社員が多い業界の中、ほとんどが正社員として採用されています」(アニメ業界関係者)

 過去の作画や資料も燃やされた。アニメ業界関係者は、

「犯人や動機なんかよりも今いる人たちが心配です。生き残った人たちも、もう怖くて絵を描けなくなってしまうかもしれない。

 アニメが好きだったのにアニメが見られなくなる人、好きだった会社なのにもう怖くて戻れない人とか出てくると思います。その人たちのケアも考えていかないといけない」

 ツイッターなどのSNSでは『#PrayForKyoani(京アニに祈りをささげる)』のハッシュタグが生まれ、世界中の多くのファンたちが追悼メッセージを寄せている。