「あの事件を起こして謹慎になったとき精神的にまいっちゃって吉本を辞めようと思ったんです。でも(現副社長の)藤原さんだけはやさしかった。“しんごちゃん、辞めないでよ”って引き留めてくれた。だから、とどまったんです」
だが、そこから仕事がまったくなくなって“直”の仕事だけで食いつないでいたという。そのころの吉本には思うところがあるようで─。
「吉本のマネージャーは毎月のように代わって、当たりハズレがすごくある。最悪だったマネージャーは、僕が“YouTubeの仕事をやりたいです”とかメールしても、“わかりました。確認します”の返事から、まったくレスがないんです」
マネージャーに催促すると、“上を通しますね”と言われるが、それでも返事は来ない。
「何週間かかるんだよって感じ。仕事をくれるという人がマネージャーに電話しても“全然出ないんだけど”と言われたことも。それで断られちゃった仕事は覚えているだけで10数本あったと思う」
吉本に関わりのある2人の芸人が話すように、吉本の体制は変わらざるをえないレベルにある。7月24日には、吉本が所属芸人と契約書を交わしていないことについて公正取引委員会が“問題あり”という考えを示した。
それらを受け25日、吉本は『経営アドバイザリー委員会』を設置することを決定。芸能事務所の労働環境や契約に詳しい『レイ法律事務所』の河西邦剛弁護士はこう話す。
「これは第三者委員会を作るということ。経営者側とタレント側の双方から意見を聞いて、中立的な契約書を作るいいチャンスだと思います。これで芸人のみなさんが不満を抱いていたギャラの分配も明確になりますから」
しかし、懸念点はある。
「売れていない芸人が多いわけですから、全員に最低限の生活給を支払ってしまうと吉本は赤字になってしまいます。それを避けるとすると、一部の売れている芸人以外は吉本興業に所属できなくなってしまう。私はギャラが低くても芸能活動をしたいという芸人の選択肢は残しておくべきだと思います」
収入の最低保証をすることが、逆に芸人になることの間口を狭めることにもつながる。
「すべての問題を一括解決しようというのは無理なことです。まずは、独占禁止法に触れる可能性があった契約書の問題をクリアにする。それが再建に向けての第一歩といえますね」
手を差しのべる? さんまを直撃
今回、特に吉本上層部の体制に苦言を呈しているのが、冒頭の極楽とんぼの加藤だ。現実問題として、吉本の体制が加藤の望むように変化することはあるのか。吉本をよく知る放送作家は、その可能性について次のように話す。