例えば、普段見ていない人にはピンと来ないかもしれませんが、『笑点』はそのときの流行をいち早く取り入れたりしています。特番のときには、旬の俳優やアイドルが出演して、レギュラーメンバーの落語家と一緒に大喜利に参加したりします。

 演芸コーナーに出てくる芸人も、少し前まではベテランの寄席芸人が多かったのですが、最近ではほかのバラエティー番組にも出ているような漫才やコントをやる若手芸人も増えてきました。

 また、普段やっている大喜利のお題にも、最先端の風俗流行が取り入れられることが多く、その時代ごとの空気をしっかり意識していることがわかります。

 一方、番組の全体的なフォーマットに関してはかなり保守的です。寄席形式の舞台で、カラフルな着物を着た落語家が座布団の枚数を競い合う大喜利は、番組開始当初からある人気コーナーです。前半に奇術、曲芸、漫才などを演じる芸人が出てくる演芸コーナーがあり、後半に大喜利コーナーがある、という形も長年変わっていません。

 番組の演出に関しても、頑なに同じ形を保っています。出演者が話したことをなぞるようなテロップは一切使われず、説明テロップすらほとんど入りません。観客を入れて公開収録をしているのですが、笑っている観客の顔が途中に挟まれることもありません。

 これは、作り手に「寄席に行っている気分で番組を楽しんでほしい」という意図があるからです。寄席の空間自体を再現するためには、いかにもテレビ番組っぽいテロップやカットは不要なのです。

誰もが安心して楽しめる「笑点」の笑い

『笑点』の「大いなるマンネリ」の核となっているのは、やはり大喜利コーナーです。時代ごとにメンバーは少しずつ変わっていますが、基本的なフォーマットはまったく変わっていません。

 面白い回答をした人に座布団を与えるというシステムは、前身番組である『金曜夜席』で始まり、この番組でも取り入れられました。座っている座布団の高さでそれぞれの成績が一目瞭然になるというのは、いかにもテレビ向きの画期的な演出でした。

 大喜利コーナーでは、毒のあるネタやきつい下ネタはほとんど出てきません。どの世代の人が見ても安心して楽しめる笑いというのが理想とされているのです。