妊娠発覚
「これからってときだったので、周りはカンカン。大変な騒ぎになってしまって。これで私の格闘技人生は終わったなと思いました」
努力が認められ期待されていたぶん、周りからの風当たりも強かった。しかし、子どもをおろすという選択肢はなかったという。
「妊娠したことをなかったことにして格闘技を続けても中途半端なことになるし、自己管理すらできていない、いまの自分にはボクシングをやる資格がないと思ったんです。
ただ、周りを裏切ってしまった思いや未練、そして子どもに罪はないのに……という思いなどがいろいろ渦巻き、ふさぎ込んでしまって。こっそり、ひっそり出産をしました」
周囲の反対を受けながらも無事、女児を出産。しかし結婚生活は順風満帆とはいえなかった。
「旦那も総合格闘技の看板選手だったので、“格闘技に集中できなくなる”と、所属ジムから大反対されていました。連日の周囲からの強い反対の声に、お互い精神的に参ってしまって、すれ違うことも多くなっていったんです。
娘が生まれて8か月くらいのころには、もう心が折れてしまって修復不可能な状態で、別居しようということになりました。お互いあまり家庭環境がよくなくて、家族を知らない者同士がくっついたので、“自分たちはちゃんと家庭を作りたい”、“離婚はしたくない”と思っていたんですけどね……」
一方そのころ、吉田選手のもとに、復帰戦のオファーが奇跡的に舞い込んできた。ボクシングに対する思いを押し隠していた吉田選手に迷いはなかった──。