大規模修繕工事そのものも予算を節約
さらには大規模修繕工事そのものも、予算節約が効果的に行われているという。
例えば、タワマンはスーパーゼネコンといわれる大企業しか建設することができない。いざ大規模修繕工事となると、マンションを造った建設会社に頼みがちだ。
ところがスーパーゼネコンは、修繕工事は自分たちではやらず、下請けに任せる。こうした二重構造で、スーパーゼネコンに見積もりを頼むと極めて割高になってしまう。
これを避けるため、多くのタワマンでは1回目の大規模修繕の段階からコンサルティング会社を通して発注しているという。
「建物の監修と建物診断ができる建築設計のプロに依頼して、プロの目でふさわしい施工業者を選択、見積もりを提出させているのです」
こうした工事費用を抑える取り組みや、付帯設備として用意されたラウンジやジムなどを整理。
そうすれば、積立金の金額を上げることなく、2回目、3回目の大規模修繕に備えることは十分、可能と櫻井さん。
つまり、タワマンは積立金が足りずに廃墟化することはなく、安心して“終の棲家”にできうるというのだ。
とはいえ資産価値を保ちたい場合には、立地には注意したいという。
「タワマンはどこでも建てられるものでなく、都心や再開発エリアでないと建設はできません。こうしたエリアには規模の大きなスーパーがあり商業施設があるなど、中古になっても人気は落ちず、価格は下がりません。
ですから資産価値を考えれば、都心にある便利な場所にあるタワマンを選ぶのがベターです」
次のような理由からも、タワマンの価値は保たれると説明する。
「実はマンションに一生住み続けたいという人の比率は下がっています。住人は、将来は介護の可能性も含め、親の家を継ぐ人も多いんですね。
そうした人たちは処分しやすい家、貸しやすい家を好みます。つまりは都心のマンションです。こうしたタワマンは、揺るがぬ資産価値を持つ物件なのです」
乱立するタワマンだが購入するなら、超一等地に限るということか。
宮路幸人さん◎税理士。多賀谷公一税理士事務所所属。AFP(アフィリエイテッドファイナンシャルプランナー)資格ほか、宅地建物取引士、マンション管理士などの資格を保有。『税理士ドットコム』にタワマンに対する懸念を管理面から指摘、注目を集める。
櫻井幸雄さん◎住宅ジャーナリスト。1984年に『週刊住宅情報』記者となり、さまざまなマンションと管理組合を取材。毎日新聞で住宅コラムを連載中。著書に『知らなきゃ損する! 21世紀マンションの新常識』(講談社刊)などがある。