巧妙な幹部の手口
高額なUSBを販売する組織の元幹部だった大城雄さん(都内の私立大4年、仮名)も冒頭の青木さん同様、最初は「買わされた側」だった。
「月20万稼げる。マルチやねずみ講じゃない、クーリングオフもできると言われていた」
今年4月、東京私大教連は、私大下宿生の1日当たりの生活費がわずか677円と発表した。そんな学生に楽して儲かる投資は打ち出の小槌に映る。大城さんもすぐに食いついた。
大城さんは組織が構築している契約までの流れを明かす。
友人から投資の話を持ちかけられ、自称「すごい投資家」というA社の幹部を紹介された。2人から長時間、投資の話をされ、USBの存在を明かされる。価格は53万円。
高すぎる金額に迷っていると、今度は友達の知人というBが登場。「借金をしても3か月で返せるから大丈夫」と言われたという。
「その翌日、Bと一緒に学生ローンに行き、資格を取るために学校に通う資金を借りたいとウソを書くようにと指示されました」(大城さん)
50万円を借り、契約書を交わしUSBをもらった。支払いは現金の一括購入だった。
Bは「訪問販売だからクーリングオフが設けられている」と伝えてきた。クーリングオフとは契約の申し込みや締結した場合でも、一定期間内であれば無条件で契約の申し込みの撤回や解除ができる制度。
しかし、契約翌日からクーリングオフ期間が終わるまで、連日勉強会やミーティングが続きそれどころではなく、大城さん自身もどんどんのめり込んでいった。
大城さんは実際にUSBのチャートを使い投資をしたが、
「50回ぐらいやって、90万円くらい損をしました」
すると前出・A社の幹部が声をかけてきた。
「“投資の資金を集めたほうがいい”と提案されました。友人を誘い、購入契約を結ばせると、2万円がバックマージンとして入る。お金は私の上の紹介者、さらにその上の紹介者にも入る仕組みでした」
まさにマルチ商法。大城さんは友人を次々に引き込み、2か月ほどで幹部になった。まったく儲からないのに“儲かった”“欲しいものが買える”と言って若者を誘い、被害者は加害者に変わった。