日本の若者は「最高の狩り場」
「幹部は誰も投資はやっていません。いい暮らしができるのは、USBを高額で販売しているからです」(大城さん)
1年半近く関わった大城さんは罪悪感を覚えるようになり、組織から抜けた。
前出・青木さんは現在もUSB購入で借りた学生ローンの返済を続けている。青木さん同様、大きな借金を負った被害者の多くは20代前半の大学生。組織の幹部の多くも20代前半の若者というのだ。
現在は閉鎖されている会社Iの幹部、M氏宅を訪ねた。東京・赤坂のハイグレードなアパート。I社の前はK社という社名だったが、1年足らずの間に社名変更している。
取材趣旨を告げると、
「いま、忙しいので……」
とインターホンを切り、以降出ることはなかった。その後、「直接会って話したい」との連絡もあったが音さたなし。
ほとんどの人が子どものころにマネー教育を受けることなく育つ日本の若者に、組織の関係者は「最高の狩り場」と黒い本音をのぞかせる。
子どもが“USB詐欺”被害に遭いそうになったら、どのように阻止すればいいのか。
別の組織の幹部(男性20代)は、
「特に狙われるのは大学3年。成人して自分で契約ができるようになった人です。お子さんの帰宅が遅くなった、ビジネスや投資の話を急に始めたり、“就職しないから”とか言い出したら注意。親御さんには、そういう詐欺が大学生の間で広まっていることを知ってほしいですね」
しかし、被害を訴えきれない事情もある。というのも、
「学生ローンで嘘をついてお金を借りている。それが詐欺罪になれば逮捕されるかもしれないし、どこにも相談できない」(前出・大城さん)
友達の人生をも狂わせる“USB詐欺”に、捜査のメスが入ることはあるのだろうか。