売買成立後に発行されるバーコードをコンビニや郵便局などで読み取れば、新たに送付用のバーコードが発行される。それを品物に貼りつけ、窓口で渡すだけで発送完了だ。
「買ってくれた人の性別すらわからないんです。逆に、僕の名前や住所も相手にはわからない。一応、芸能人ですから、これは本当に助かります」
その後、食器やぬいぐるみなど約15点を出品。意外なことに、篠井さんは出品の際、相場価格のリサーチを一切しない。
「“自分がこれを買うとしたら、いくらくらいかな?”と、自分の感覚で値段をつけています。いま思うと『星の王子様』の陶器セットは5万円でも売れたと思うけど、そこで欲張らないことが大事。
僕のメルカリモットーは、頑張らないこと。“売らなきゃ”と必死になると負担になるでしょ? お仕事もあるので深入りしすぎず、のんびり、ゆったりと。“稼ぐ”のではなく、“いらないものがお金になった♪”と考えるほうが楽です」
匿名取引だからこそ、篠井さんは、手書きの一筆箋の同梱を欠かさない。
「ただ送りつけるのは嫌だし、せっかくの交流。何より、そのほうが僕にとっては楽しい。“こんなきれいな梱包は初めて”とメッセージをもらったときは褒められた気がして、すごくいい気持ちでしたね。ものは減る、買った方は喜んでくれる、お小遣いは増える。三拍子そろっているところが、精神衛生上すごくいいんですよね」
そう微笑む篠井さんだが、還暦をすぎてから、体力や気力の衰えをひしひしと感じているという。
「そういう年代になってきているので、本当に死ぬことを考えますね。変な言い方にはなりますが、この先の夢は、ほどよくがんになること。なぜなら、がんだけは“余命”がわかるから。死ぬこと自体は、あんまり怖いと思わなくなったかもしれません。僕は奥さんも子どももいないので、託す思いも心配もない。身ひとつですから。でも、急にぽっくりいったら、弟たちに迷惑がかかるので、やっぱりがんがいいですよね」
余命がわかれば、その間にやりたいことも後始末もできる。
「だから、がんになったことをちゃんと把握しておきたいので、人間ドックは年1回受けています」
《PROFILE》
ささいえいすけ。俳優。1984年、劇団『花組芝居』を旗揚げ、女形として活躍。'92年、ゴールデンアロー賞演劇新人賞を受賞。特技は日本舞踊。宗家藤間流師範・藤間勘智英の名を持つ。2014年より石川県観光大使。