「バンドマン蟻地獄」はハマったら最後
「でも彼女より、シオリちゃんのほうが好き〜」とヘラヘラ笑いながら話しかけてくる。なぜ彼女がいるのに、自分のナワバリでもある下北沢でナンパするのだろうか。
「え〜別に、結婚したいとか思ってないしなぁ。正直、彼女も面倒だなって思うことが多いんだよね。ていうか、俺がどこで誰と遊んでてもさ、彼女には関係なくない?」
一瞬、思考が停止したものの「やっぱり3B……」と心の中でつぶやいて、無言でニッコリ笑ってみせた。
──こんなやつにハマったらヤバい。酒に酔って距離が近くなった、前髪重ためな“歩く下北沢”はセクシーでグッとくるものがあったが、涙とお酒をグッとのんで、彼をおいてバーを出ることにした。
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下北沢にいる美容師やバンドマンたちは今もなお、夢追い人が多く、安定した家庭を持ちたいというよりは、自分の夢の実現が最優先で、「先のことはよくわからない」が口グセな人が多いように思う。
本気で付き合うと金銭的に苦労することがあるかもしれないが、夢を追いかけている彼らだからこそ、その突拍子もない発言や感性は、刺激的で女心に刺さり、母性をくすぐるのだろう。
だがしかし、彼らのいちばん大切なものは「自己実現」であり、恋愛は第一優先にはなりづらい。先の見えない将来への不安をぬぐう、いっときのお遊びでしかないのだ。『週刊文春』で小手伸也の“独身偽装不倫”疑惑が報じられ、小手が言い訳として《下北的なノリ》と発言したのはこういうことだったのかもしれない、と妙に納得がいったのだった。
ちなみに、“歩く下北沢”は「え〜、おれんち近所だからおいでよ〜」と最後まで性欲のアクセル全開であった。お金のないバンドマン、ホテルではなく自宅へ誘うのも下北沢らしさがあったのだった。
最後に、彼の外見の雰囲気をわかりやすくお伝えしたい。
■顔面→[Alexandros]川上洋平似のすっきりした塩顔
■服装→ゆったりパーカーにぴったり黒スキニーのバンドマンコーデ
■髪型→前髪重ためで襟足はすっきりな韓国男子系ヘア
■年収→推定200万。バンドは儲かっていないとのこと
■感想→178センチの長身に細すぎるくらいの美脚に母性をくすぐられまくる
【注意】この手の男性はひとりの女性に入れ込むということはあまりなく、結局キープし続けるためには金銭的な援助が必要になってきたりするので最終的にヒモになる確率が高い。しかし、見返りを求めるとしんどいので、あくまで慈愛の精神で尽くすしかない。
三九二汐莉(みくに・しおり)◎フリーライター。『週刊SPA!』(扶桑社)、『mina』(主婦の友社)などで恋愛や婚活、最新の出会い事情について寄稿中。
逆ナンやギャラ飲みなどの現場にも乗り込むサブカル女子。