高揚感、幸福感しかない
前回の初演をやりきった経験が自信につながったかというと、「それもないなー」と川平さん。
「この年になってくると、自分の中で“調子に乗るなよ、ジェイ。テイク・イット・イージー”って声が聞こえるんです。若いころには“俺、イケる! 俺を見てくれ”っていう根拠のない自信があったけど(笑)、昔の自分がうらやましい。
でもいまは“俺がよければいい”じゃない。作品を受け取る側のこと、セリフの意味すること、届けるべきことに自分の志向があると思うんです」
作り手も観客も、初演の後には“『ビッグ・フィッシュ』ロス”に陥ったというけれど、川平さんは?
「いや、出会えたこと、完走できたことへの感謝しかなかった。打ち上げの後、家に帰って靴を脱ぐとき“Thank you'Load”って言葉が出たんです。“ありがとう、神様”って。
次の朝起きて“ああもうないんだ、終わったんだ”と思ったときもそう。でも僕思うんですけど、千秋楽のカーテンコールで挨拶したとき、泣けばよかった(笑)。想像したら泣くと思ったんですよ! でもみんなに迎えられて出ていくとき“なんか楽しーい♪”って(笑)。高揚感、幸福感しかなくて、感慨も涙も全然こみ上げてこない。
(演出の)白井さんに“ありがとう!”って言ったときは“ウッ!”ってきたけど、“おーっと、ノーノーノー、危ない危ない”って我慢しちゃった。“賛美!”ってほうにチャンネルが入ったなぁ」