住民は意外にも冷静な対応
──原因や復旧の見通しは?
「原因はわかりません。いつ復旧するかもわからない。仮復旧でもいいから、一刻も早く普段の生活を取り戻せるようにお願いしています」
意外にも怒りの声は聞かれず、冷静な対応だった。便利な街に住み続けたいという気持ちの表れだろうか。被害の少なかった近くのマンション住人も心配する様子はない。
「台風の日は夜に停電しましたが、翌朝10時には復旧しました。やや高いところに立っているし、今のところ特に困ったことはないですね。7年前から住んでいて、便利だからほかに移りたいとは思いません。泥水が乾いて砂ぼこりが舞うのがちょっと気になりますが、噂されているような汚水ではなく、ただの泥ですよ」(40代の女性)
しかし、被害はマンションだけではない。JR武蔵小杉駅自体も機能が麻痺(まひ)した。
「1メートル弱くらいまで駅の改札が水没したので改札機が故障し、他駅から改札機を運んできました。エレベーターと自動販売機は故障したままです(編注:10月18日時点)」(新南口改札の駅員)
被災マンションは価値が下がるのか?
水害に対する弱さが明らかになったことで、武蔵小杉にあるタワマンの資産価値が下がることはないのか。
株式会社スタイル・エッジREALTYの 不動産コンサルタント・玉井諒氏に話を聞いた。
「下がる可能性は高いですね。武蔵小杉に住むことを希望する人には、再開発されたきれいな街というイメージを抱き、興味を持っている人が多い。今回の台風による被害を見て、ハザードマップの重要性やマンションのマイナス点などを検討するきっかけになる可能性があります」
不動産鑑定士・洲浜(すはま)拓志氏も同じ意見だ。
「配水などがきちんと整備されていなかったことが、今回の台風で露呈しました。川が逆流するなどの想定ができていなかったように思えます。 “台風で問題になった物件だ”と思ってしまうと、誰も買いたがりませんよね」
マンションの維持費が増加する可能性もある。
「修繕積立金を使って被害箇所を修理することになります。屋上や外壁の修理など、将来のメンテナンスのために積み立てていたお金をここで使ってしまうと、10~20年後に修繕積立金が必要になったときに、お金が足りなくなるかもしれません。“修繕積立金を2倍にする”と告げられても困りますよね」(洲浜氏)