「幸せな結婚」のほうがファンタジー
ほかにも、高校時代からの親友である独身3人組が、過去の出来事を“タラレバ”で語り、夜な夜な飲み会を繰り広げる『東京タラレバ娘』(日本テレビ系)や、「結婚しないとクビ」と上司から宣告され、婚活に奔走する『サバイバル・ウェディング』(日本テレビ系)などが記憶に新しい。
「人気コミックが原作の『東京タラレバ娘』は、主演を演じた吉高由里子さんの“リアルすぎる独身女性”が反響を呼びました。放送終了後には《未来の私すぎてヤバい》《思い当たることばかり》と、ドラマの感想がSNSで飛び交うこともありましたね」(同・テレビ誌ライター)
このように独身ドラマの主人公のトレンドが、女性から男性へと変わったことに理由はあるのだろうか。コラムニストの木村隆志さんは、世間の結婚観の変化が関係していると話す。
「生涯未婚率のデータが示すように、いま世間では男性でも、結婚しないというのが一般化してきています。たくさん恋愛する人、幸せな結婚を早い年齢からしている人というほうがファンタジーに見えるのでしょう。そういう主人公では、視聴者の共感を得にくくなっているといえます」
かつてのトレンディードラマのように、美男美女が恋に落ちる話は、現在では絵空事に感じられてしまうようだ。
「『東京独身男子』は、一見ハイスペックで誰もが羨むような生活をしているようで、三者三様なにかしらの欠陥を抱えている主人公たちでした。『まだ結婚できない男』もイケメンで仕事ができるのに、偏屈で皮肉屋という欠陥があります。こういった欠陥を抱えた人たちがどのように結婚していくのか、最後には幸せになれるのかというストーリーのほうが、いまの視聴者にはリアルに感じられるのでしょう」(木村さん)
また、独身男性が主人公にもかかわらず、女性視聴者の共感を得やすいという点もトレンドの理由にあるという。
「“こういう男いる!”と、女性同士で盛り上がる設定が多いんです。独身女性が主人公のドラマは、しっかりと“結婚”というものに向き合って婚活したり、出会いを求めて奔走したりするストーリーが多い。その一方で、独身男性のドラマは、結婚できない理由を本質的に考えようとしていません。
むしろ“男の自分たちには関係ない”と重要視せず、上から目線のスタンスの主人公が多いんですね。ハイスペックだけど、偏屈すぎて結婚できない男性が右往左往する姿は、女性から見ていてスカッとするような爽快感があるのではないでしょうか」(木村さん)