便座やタオルから感染することも
単純ヘルペスウイルスは、感染している相手とのセックスが主な原因だが、病変が広範囲なためコンドームでは防ぎきれない。症状が出ていなくても、唾液や体液にウイルスが含まれていることがあるので注意が必要だ。
「男性の口唇ヘルペスのウイルスが、女性に感染することがあります。男性が乳房や性器をなめることで唾液を介して感染します。性器への感染は前述のとおりですが、乳房にも同じように痛みを伴う水ぶくれやただれが起こります」
性器ヘルペスの初感染の7割は1型で、唾液によるものだという。乳房の場合、性器ではないから性感染症ではないと油断していたり、経験の浅い医師にかかるとヘルペスを見逃してしまい感染を広めてしまう可能性もある。
「口唇ヘルペスが発症している男性とは、キスやオーラルセックスをしないことです」
さらに、
「ウイルスが付着した便座や湿ったタオルを介して感染することもあります。また、再発を繰り返すうちに肛門やお尻に水ぶくれができることが多くなり、便座にウイルスがつく可能性があります。
ウイルスがついた便座はアルコール(エタノール)で消毒するのがいいでしょう。清潔と乾燥を心がけることが大切です」
性器ヘルペスの主な治療は投薬。
「ウイルスが増えるのを抑える抗ヘルペスウイルス薬の飲み薬や塗り薬を使います。重症の場合は点滴を行うこともあります」
薬はできるだけ早く使い始めることが重要。症状を軽減し、治癒までの期間を短くすることにつながる。
「少しでも疑いのある症状が出たら、すぐに専門の医療機関にかかることが大切です」
また、再発には今年2月から保険適用のPITという新しい治療法が導入された。
「“お守り療法”と称しています。再発に限り、あらかじめ医師から薬を処方してもらい、前兆を感じたら飲むという方法です。
これまでは、症状が出てから医療機関にかかり、薬を処方してもらわなくてはならなかったものが、早期に薬を飲むことで発症を抑えることが期待できます」
再発を何回も繰り返している人の中には、発症の前に性器や下半身に違和感や不快感、痛みなどの前兆を感じることがあるという。
「前兆を感じたら6時間以内に服用すれば、重症化を防げます。すぐに病院に行くことができないときや旅行先などで薬を持っていれば安心できる“お守り”になります」
性器ヘルペスは、とにかく感染しないことが第一。もしも感染してしまったら、ほかへうつさないこと、専門の医師に適切な治療を受けることが重要だ。