気をつけたい性感染症2 尖圭コンジローマ
ヒトパピローマウイルス(HPV)が皮膚や粘膜の微小な傷から感染し、発症する病気。
「性器や肛門に、先のとがった小さなイボがたくさんできて鶏のトサカ状やカリフラワー状に成長します。外用薬や外科的治療などでイボを取っても、HPVは表皮の最も深い基底細胞に存在し、免疫力が低下すると再発しやすくなります。
治療は外用薬や外科的治療ですがウイルスを根絶する治療はないので、再発との闘いです」(尾上泰彦先生、以下同)
現在、180種類以上の遺伝子型が見つかっており、がんを引き起こす能力が高い「ハイリスク型」と、がんの心配が低い「低リスク型」がある。
尖圭コンジローマの原因となるのはほぼ低リスク型のHPV6型とHPV11型だが、ハイリスク型は子宮頸がんや陰茎がんの原因になることが多いため検査が必要だ。
「潜伏期間が3週間から8か月と長く、誰から感染したのか見極めが難しい性感染症です。また、痛みやかゆみがほとんどないので発見が遅れることもしばしばあります」
気をつけたい性感染症3 梅毒
2011年から増え続けている梅毒は、トレポネーマという菌に感染し、血液を介して全身に広がりさまざまな症状を引き起こす全身性の感染症。性行為やその類似行為で感染する。
「違う症状が出たり消えたりと梅毒は症状を変えてあらわれるため、“偽装の達人”と言われ、慣れない医師は診断が難しい性感染症です」
特に若い医師は、昔の病気というイメージがあり知識や診療経験が乏しいという。
「最初は硬いしこりのようなものが性器にでき、それが崩れて潰瘍になります。しかし、痛みがなく3週間~6週間で消えてしまいます。
これで治ったと思ったら大間違いで、脚の付け根のリンパ線が腫れますが、これも痛みがありません。最終的には全身に発疹ができて、鼻が欠けたり落ちたりします」
心臓、血管、脳などの複数の臓器に病変が生じ、場合によっては死亡に至ることもあるが、現在では、抗菌薬が有効なので早期に治療を行えば、命にかかわることはほとんどないという。
気をつけたい性感染症4 トリコモナス
「トリコモナス原虫によるポピュラーな感染症で、女性の場合は主な感染部位は腟です。腟トリコモナスとは大きさが平均18マイクロメートルで洋梨のような形をした原虫で、3本~5本の鞭毛と波動膜を動かして活発に運動します」
典型的なのは、黄緑色の泡状のおりものが大量に出て、痛みやかゆみを伴う。
男性が感染した場合、トリコモナス原虫は前立腺や精嚢などにおとなしく潜んでいて症状があらわれにくいために、知らずにうつしてしまうことがある。
一方、性行為以外にも感染経路があるという。
「トリコモナス原虫は乾燥には極めて弱い反面、水中では活発で、かなり長い時間、感染力があります。そのため、かつては浴槽を介して家族内感染を引き起こすと考えられてきました。
浴槽のほかにも、下着・タオル・便器などに触れる機会があれば感染することが知られています。このことから、トリコモナスは幼児や性交の経験がない女性にも感染する可能性があると考えられます」
セックスがごぶさたでも感染に注意が必要。