罰則の厳罰化によって一定の歯止めになると見るが、
「ルールを多少守らなくても、事故さえ起こさなければいい、というのが交通に関してはある。法律の強化で、ながらスマホをやらなくなる人は増えると思いますが、だんだんとルーズになって守らなくなる人もいると思います」
と志堂寺教授は案じる。
前出・鳥塚部長も、
「飲酒運転も厳罰化してから減りましたが、慣れてきて徐々に増える。ルールを厳しくするとだいたいその流れ」
と危惧し、
「加害者も人生を失うことを自覚してほしい。運転中はカバンに入れ、手に届かないところに置けば諦めもつく。ハンズフリーは規則的にOKでも、会話に引き込まれるのでやめたほうがいい。カーナビとして見る場合も、チラ見を意識したほうがいいですね」
厳罰化によってひき逃げが起こる可能性
厳罰化による不幸な副産物を恐れるのは、前出・高山弁護士だ。
「ひき逃げです。重い処罰になるなら、逃げてしまおうとなる。飲酒運転でもありますが、現場から逃げることによって被害者の救出が遅れることもあります」
と最悪の事態も想定し、
「ペナルティーが重いからやめる、ではなく、危険だからやめようとなってほしい。スマホのながら運転ができない構造を、技術的にも考えていく必要があると言いたい」
と車を運転するすべての人の意識改革と、車やスマホの開発者へも対策を呼びかける。
妻が犠牲になった前出・井口さんは、厳罰化に期待を寄せる一方、
「現在の刑法では、ながらスマホ運転で人をはねても基本的に『過失運転致死傷』にしかならない。『危険運転致死罪』(最高刑懲役20年)が適用できるよう法改正も訴えていきたい」
妻の無念さを代弁できる夫として、自分を奮い立たせるかのようにそう誓った。